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建築家に学ぶ、良いデザインとは

建築家がデザインするかわいい家

住宅を購入する場合、最近では建築家が設計したデザイン住宅を希望する人も増えてきています。デザイン住宅とはデザイン性が高い住宅という意味だけではなく、そこには建築家の価値観も込められています。
ここでは、かわいい家との要望を受けた建築家が実際にどのような家を設計したのかをみていくことにします。

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建築家 長江紅美

建築家 長江紅美
長江紅美建築設計事務所

このデザイン住宅を設計したのは、建築家の長江紅美さん。
大学院では建築工学を専攻し、建設分野全体を視野においた幅広い領域の学問を学びました。
その後いくつかの建築士事務所を経て、現在では長江紅美建築設計事務所を主宰しています。
長江さんの設計において基盤となっていることは、住宅は生活する上で最も身近な環境であるということ。
毎日その中に身を置かなければならない住宅が、人を優しく受け入れる存在であるように常に意識しています。
人とは、そこに住まう人は勿論のこと、そこを訪れる人をも含みます。その住宅に関わる人すべてにそっと寄り添う住まいを造りたいとの強い信念を持ち続け、学生時代から培った柔軟な発想力で日々住宅の設計に取り組んでいます。

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廊下に造られたアーチの連続。ドアとは違いアーチでの緩やかな仕切り方は、廊下にいても部屋と部屋とのつながりを感じさせてくれます。

街に溶け込む家、それが必要

建築家の役割は人と人との関係性をうまく紡いでいくことである、と語る長江さん。
人と人との絆づくりに役立つ住宅建築を目指す長江さんにとって、家族関係は勿論のこと客人としてその家を訪れる人やその家が属するコミュニティとの関係に至るまで、そこに住まう人と周りにいる人との関わりを具体的個別的に想像することが重要になります。
そのような長江さんがこの住宅を設計する際にまず考えたのがコミュニティで、この住宅が建つのは新興住宅地であるということでした。
新興住宅地に住宅を求めるのは、多くの場合若い夫婦です。
そこでこの住宅の外観を、単に1つだけの箱ではない、大小異なる箱をバランスよく配したモダンなデザインにすることで、このおしゃれな街並みに溶け込むようにしました。
さらにこのボリュームのある立体的な外観には奥行きがあり、いつでもだれでも受け入れてくれそうな懐の深さが感じられる温かい印象を与えています。
また道路に面した庭に、狭いスペースでありながら印象的な植栽をすることで、街並みの豊かな表情作りに一役買っています。
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キッチンからダイニングを通りテラスに至るまで、何物にも遮られずまっすぐに続く視線が部屋の広がりを感じさせてくれ、動線からみても機能的になっています。

コンセプトはかわいい家

コミュニティの中でどのように存在するかということも大事ですが、住宅ではそこに住まう人の気持ちが何より大切です。
新興住宅地に住居を建てようとしている人の気持ちに寄り添ってみることが重要になります。
想定される購入層は若い世代。
実際の不動産販売業者からの依頼内容でもあったので、長江さんはターゲットを若い主婦層に絞って「かわいい」家づくりを目指しました。
かわいい家という曖昧な言葉から長江さんがイメージしたのは柔らかな曲線で構成された家で、この住宅では柔らかな曲線を体現しているアーチが至る所に使われています。
この住宅では、室内と室外の領域の境である玄関ポーチやテラスにも、また室内の区切りである廊下や部屋と部屋の間にも、仕切りとして使われているのはドアではなくアーチです。
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アーチを介して斜めにつながる部屋。これだけの広い開口部で別の部屋にいてもお互いの気配を感じられる一方、自分の時間を大切に過ごすこともできます。

アーチが人と人の間を紡ぐ

この住宅に入ってまず感じるのが広々とした解放感で、家中に自由な空気が満ちているようです。
そのように感じられる原因は、ドアの数が少ないから。
多くの家で設置されているリビング・キッチン・各個人の部屋のしきりとしてのドアが見当たりません。
だからといってただやたらと広い空間が広がっている印象ではなくきちんとメリハリが感じられるのは、アーチがうまく使われているからです。
アーチは本来は閉ざされた壁に設けた開口部という意味ですが、この家では逆に広く開け放された開口部の両端で隣り合う領域を区切るような使われ方がされています。
アーチで作られる境界は、ドアによる仕切りのように厳格なものではなく曖昧です。
しかしこの曖昧さこそが、長江さんが求めているものといえます。
ドアは閉めてしまえば自分だけの世界の中に籠ることができるもので、自分の時間を大切にしたい人にとってはドアは必要不可欠といえますが、それは相手との関わりを拒絶することにもつながりかねません。
また仕切りが全くないのでは、いくら家族とはいえプライバシー上も問題があります。
この両者を調整するのが、アーチという境界です。
アーチを多用しているこの住宅からは、人間関係は多様ではあるができる事なら自分の方から手を伸ばし距離を縮めて人との関係を紡いでいこう、という長江さんのポリシーを感じ取ることができます。

まとめ

今回は、アーチという緩やかで曖昧な境界が多様な人間関係を調整し人と人とを紡いでくれる、という価値観を持った建築家による住宅を紹介しました。
他にもデザイン住宅を設計する建築家はたくさんいます。
デザイン住宅を希望しているのであれば、いろいろな建築家の作品に触れてみて下さい。

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