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熊本地震による二重ローン問題を回避する制度「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

今回、激甚災害に指定されたことで、国からの補助金がアップ。国の全面的な財政支援により熊本県およびその被災者の復興・生活再建に一筋の光が差し込みました。一部報道によると、その額は6千億円前後とも言われています。

熊本地震を激甚指定。生活基盤である住宅の確保が喫緊の課題

平成28年4月25日、政府が熊本地震を「激甚災害」に指定しました。

(平成28年4月25日付日本経済新聞)
「政府は25日の持ち回り閣議で、熊本県中心に相次いだ地震を激甚災害に指定すると決定した。
自治体が実施する復旧事業などへの国の補助率をかさ上げする。26日に施行する。」

地震でマイホームを失い、失意の中、体育館や車の中で避難生活を続けている被災者には一日でも早い復興が望まれます。そのためにはまず生活の基盤である住宅を確保することが最重要課題です。住宅の確保について、安倍首相は「9000戸の公営住宅の確保と3000戸分の仮設住宅の資材の用意がある」と述べています。

被災者が頭を抱える「二重ローン問題」

震災でマイホームを失った人が頭を抱える住宅ローンの問題。被災して住宅に住めなくなったとしても、住宅ローンが消えてなくなるわけではありません。中には大震災に備えて地震保険に加入していた方もいるかもしれませんが、大半の被災者の方が小中学校の体育館や狭い仮設住宅で暮らしながら、全壊したマイホームの住宅ローンを払い続けるという、なんともやり場のない悔しい思いをしているのが通常でしょう。
新しい住宅に建て替えるにしても、そのためには当然お金がかかります。再度、住宅ローンを組み直さなければいけません。住めなくなったマイホームの住宅ローンと新たなマイホームの住宅ローンの二重の負担を背負わなければいけないのです。従前の住宅ローンの支払いが精一杯で、建て替えを断念するケースもあります。被災者が抱えるこのような二重の負担は「二重ローン問題」と呼ばれ、阪神淡路大震災や東日本大震災で社会問題に発展しました。
この二重ローン問題に対処するために、2016年4月に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という新たな制度が始まりました。全国銀行協会が中心になって作成された制度で、今回の熊本地震で初めて適用されます。この制度を利用することで、煩雑で時間のかかる債務整理が行いやすくなるとされています。

ガイドラインの手続きの流れ

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きについて、詳しく知りたい方は全国銀行協会のホームページを参照してください。以下では債務整理の流れについて簡単に説明します。

※全国銀行協会のホームページ
https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-i/8815/

1金融機関等へ手続着手の申出
債務整理の手続きは、まず債権者である銀行や信用金庫などの金融機関等へガイドラインに基づく手続き着手を申し出るところから始まります。申出先は最も多額の借入れがある金融機関。その際、債務者は借入先や借入残高、年収、資産などを報告する必要があるので、可能な範囲で借入状況がわかる資料を用意しておきます。

2弁護士などの専門家に手続の支援を依頼
ガイドラインに必要な一定の要件が充たされれば、手続きが開始されます。
債務者は「登録支援専門家」と呼ばれる弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に手続きの支援を依頼することができます。具体的には、弁護士に依頼する場合には、地元の弁護士会などを通じて行われます。

3債務整理の申出
全ての債権者に債務整理の申出を行います。申出には申出書の提出のほかに財産目録や債権者一覧表などの必要書類の添付が必要になります。
これらの必要書類の作成は複雑で難しいので、自分でできない場合には上述の専門家に依頼するとよいでしょう。
債務整理を申し出ることにより、すべての債権者からの督促や取り立てがいったんストップします。

4調停条項案の作成・提出
債務者の依頼を受けた専門家は、全ての債権者と事前の協議を重ね、ローンの減額や免除についての内容が記載された調停条項案を作成し提出します。
このとき債権者は調停条項案に同意するか否かを1カ月以内に回答しなければいけません。

5簡易裁判所へ特定調停の申立
全ての債権者から同意が得られれば、簡易裁判所へ特定調停の申立てを行います。
なお、専門家に依頼した場合でも、特定調停には原則として債務者本人が出頭しなければいけません。

6特定調停手続修了
簡易裁判所の特定調停手続により調停事項が確定され、調停結果が通知されれば晴れて債務整理手続の終了です。

特定調停の手続は難解な法律用語のオンパレードで素人にはお手上げかもしれません。その場合にはひとりで悩んでいないで上述した弁護士などの専門家に依頼するといいでしょう。債権者の特則や取り立てが一時ストップするだけでも精神的に楽になると思うので、できるだけ早いうちに債務整理の申出をしておきたいところです。

救済制度の普及には広い認知が必要

ガイドラインの利用で何ができるのか?

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用することで、住宅ローンなどの借金を抱えた債務者は自己破産や民事再生などの法的な債務整理によらずに借金を減額又は免除することができます。
このガイドラインは全国銀行協会が作成した私的なルール事項なので、金融機関との話し合いで債務整理が行われるのが特徴です。
そのため、自己破産や民事再生を利用した場合のように、個人情報に傷がつくことはありません。
つまりこのガイドラインに則った債務整理によれば、いわゆるブラックリストとして個人信用情報が記録されることがないので、新たに借入れを行ったり、クレジットカードを作ったりすることができます。

もちろん住宅ローンも組み直すことができるので、新居立て直しのための資金も確保することが可能です。
また、上述した手続支援を行う弁護士等の費用を国が全額支援してくれるのもこの制度の魅力。
さらには全ての財産をローンに充てる必要がなく一部を手元に残しておくことができます。その額も自己破産手続においては99万円とされていますが、ガイドラインの場合は上限が500万円までと大幅に拡大されています。
おまけに政府の広報誌である官報に名前が載ることがありません。

制度は認知されなければ意味がない

このように「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は、被災者の生活再建を後押ししてくれる素晴らしい制度ですが、実はこれには原型があります。それは、2011年の東日本大震災後に日本弁護士連合会と全国銀行協会によってできた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」で、同ガイドラインを参考に策定されました。しかし、東日本大震災では当該制度があまり活用されなかったのが現実です。被災した3県で約12万戸以上の住宅が全壊しましたが、ガイドラインによる債務整理が行われたのはわずか1500件程度だと言われています。おそらくこの制度ができたのが震災後5カ月後と遅かったこと、また制定後も被災者に制度の存在が広く行き渡らなかったことが原因でしょう。

せっかくのすばらしい救済制度も認知されなければ意味がありません。熊本地震では同じ轍を踏まないことが期待されますが、まだまだ被災者に救済制度が活用されていないといわれています。政府や自治体、弁護士会、マスメディアなどを通して制度の広報に務める必要があります。また、ややこしい私的整理の手続について、いかに被災者に分かりやすく説明できるかについても大事な問題となるでしょう。

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※当コンテンツに記載されている内容については、現在は終了している制度や古いニュースも含まれております。あくまでご参考いただくものでございますので、実際に住宅購入・ライフプランを検討される場合は、現在の情報をご自身で確認の上ご判断ください。