防火地域・準防火地域とは
写真②消防隊員による放水による消火訓練-min.jpg 88.32 KB防火地域と準防火地域とは、火災の被害が拡大するのを防ぐために定められている区域のことです。防火地域の目的は、耐火建築物によって火災から地域を守ったり、燃え広がるのをせき止めたりすること。そして準防火地域は、防火性能を高めて、延焼を防いだり延焼速度を遅くしたりして消火活動を助けることが目的です。
指定エリアは主に、駅前や建物が密集した地域や、幹線道路沿いです。火災を防ぐための指定地域は、防火地域や準防火地域の他にも建築基準法第22条指定区域、いわゆる「法22条区域」があります。法22条区域指定エリアの多くは、防火区域を囲むように指定されている準防火区域の、さらにその周りです。
防火地域・準防火地域の建築物は、火災に強く安心ですが、家づくりの際には制限があります。そのため、制限の内容をしっかりと理解してから家づくりをスタートするようにしましょう。
防火地域・準防火地域の建築制限
写真③静岡県_白い外壁のスッキリとした家-min.jpg 599.99 KB防火地域や準防火地域に家を建てる場合、広さや階数によって異なる制限があります。さらに、東京都では新たな防火規制区域の建築制限も設けられているので、注意しましょう。ここでは、それぞれの建築制限とその内容について詳しくまとめたので、参考にしてみてください。
防火地域の制限
防火地域では、
看板や広告塔などの工作物が高さ3mを超える場合や建築物の屋上に設けるものは、主要部分を不燃材料で造るまたは覆う必要があります。
建築制限は以下の表にまとめました。
階数\延床面積 |
延床面積50㎡以下 |
100㎡以下 |
100㎡超 |
4階以上 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
3階建 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
2階建 |
45分準耐火建築物 |
45分準耐火建築物 |
耐火建築物 |
平屋建 |
防火構造(外壁・のき裏)※50㎡以下の附属建築物 |
45分準耐火建築物 |
耐火建築物 |
参考元:国土交通省|建築基準法制度概要集
建築制限で規定される建物について
耐火建築物とは、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部が耐火構造になっている建築物です。一般的な火災発生時と鎮火後に周囲に損傷が生じない構造を耐火構造といいます。準耐火建築物は、主要構造部が準耐火構造になっています。準耐火構造とは一般的な火災発生時に火元から他に燃え広がらないようにする構造のことです。
耐火構造・準耐火構造はどちらも試験などで性能を確認し、国土交通大臣の認定を受けている必要があります。一般的に、鉄筋コンクリート造や鉄骨造が多いですが、近年では木造での耐火建築物の施工が可能になっています。
また、防火構造とは、建物周辺での火災で火が燃え移らないよう一定の防火性能を備えている構造のことです。主に、屋外側にモルタルを塗ったりガラスウールなどの不燃材料を使用したりしています。防火構造の工法も、国土交通大臣の認定が必要です。
準防火地域の制限
写真④燃える家 火事 耐火 火災保険 防火-min.jpg 35.23 KB外壁やのき裏で延焼の恐れのある部分は、防火構造にしなければなりません。また、附属する高さ2mを超える門や塀も延焼の恐れがある部分を不燃材料で造るまたは覆う必要があります。
建築制限は以下の表にまとめました。
階数\延床面積 |
延床面積500㎡以下 |
500㎡超1500㎡以下 |
1500㎡超 |
4階以上 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
3階建 |
定の防火措置 |
45分準耐火建築物 |
耐火建築物 |
2階建 |
防火構造(外壁・のき裏)※木造建築物の場合 |
45分準耐火建築物 |
耐火建築物 |
平屋建 |
防火構造(外壁・のき裏)※木造建築物の場合 |
45分準耐火建築物 |
耐火建築物 |
参考元:国土交通省|建築基準法制度概要集
防火地域・準防火地域共通の制限
新たな防火規制区域の制限(東京都)
東京都建築安全条例第7条に基づいて指定された新たな防火規制区域です。東京都知事が指定した災害時の危険性が高い地域にて、耐火性能を強化する目的で設けられました。「燃え広がらない・燃えないまち」を目的として、指定地域内の災害時の安全性確保を目指しています。
建築制限は以下の表にまとめました。
階数\延床面積 |
延床面積500㎡以下 |
500㎡以上 |
4階以上 |
耐火建築物 |
耐火建築物 |
3階建 |
準耐火建築物 |
耐火建築物 |
2階建 |
準耐火建築物 |
耐火建築物 |
平屋建 |
準耐火建築物※延床面積が50㎡以下の付属建築物に限り防火構造(外壁・のき裏) |
耐火建築物 |
参考元:豊島区|準防火地域・新たな防火規制区域・防火地域について参考元:国土交通省|東京都建築安全条例
準防火地域のメリット・デメリット
写真③シーソーに乗ったメリットデメリットの文字-min.jpg 37.1 KB防火地域や準防火地域に家を建てるときには制限がかかりますが、その反面メリットもあります。ここからは準防火地域ならではのメリットやデメリットを紹介します。
準防火地域に家を建てるメリット
まずはメリットの紹介です。
・火事に強い家が建てられる
準防火地域に家を建てるのであれば、制限を遵守した家になるため、おのずと火事に強い家になります。耐火性が高いと、周辺が火事になった場合に自宅が延焼しにくく、また万が一自宅が火事になっても周辺の家へ迷惑をかけることが少なくなるでしょう。
・火災保険の割引を受けられる
火災保険は建物の構造で保険料率が異なり、火災へのリスクが高いほど保険料が高くなります。耐火建築物や準耐火建築物は、対策を施していない住宅に比べリスクが低いと判断され、火災保険も割安になります。火災保険料は数千円から数万円が毎年かかるため、長期間住むことを考えると大きなメリットとなるでしょう。
・建ぺい率の緩和を受けられる
土地にはそれぞれ、敷地面積に対する建築可能な面積の割合である「建ぺい率」が定められています。100㎡の敷地で建ぺい率が50%であれば、建築面積が50㎡までの家しか建てられないというものです。
準防火地域に耐火建築物、もしくは準耐火建築物を建てる場合は建ぺい率が緩和され、10%加算されます。またもともとの建ぺい率が80%であれば、10%加算の90%ではなく、建ぺい率の制限を受けなくなるのです。敷地いっぱいに家を建てられるのは、より広い家に住みたい方にはメリットと言えるでしょう。なお、防火地域に耐火建築物を立建てるときも同様の措置を受けられます。
・利便性の高い土地に住める
防火地域に指定されるのは、商業施設が多く交通量も多い市街地や、駅前、幹線道路沿いなどです。そしてその周辺が準防火地域に指定されます。そのため準防火地域は移動の利便性が良く、通勤や通学などのストレスを軽減できるでしょう。また買い物にも困らず、ショッピングモールが徒歩圏内という可能性もあります。
準防火地域に家を建てるデメリット
続いてデメリットの紹介です。
・建築資材や建築方法に制限がある
準防火地域に家を建てる場合、耐火建築物や準耐火建築物にしたり、一定の防火措置を講じたりする必要があるため、それに適応した建築方法や建築資材を選択しなければなりません。「木製のドアにしたい」「壁一面を大きな窓にしたい」といった希望があっても、適した資材がなければ叶わない可能性もあります。
ただし防火地域ほど制限は厳しくありません。希望するイメージや間取りがある場合は、土地探しの段階からハウスメーカーや工務店などに実現可能かどうか相談しておくと安心です。
・土地の取得費用や建築コストが高くなる可能性がある
防火地域・準防火地域に家を建てると高くなる?
写真⑤お金のことを考える夫婦-min.jpg 90.92 KB何かと制限の多い防火地域や準防火地域。気になるコストについて見ていきましょう。
建築費用はコストアップ
防火地域や準防火地域に家を建てる際の費用は、一般的な住宅に比べ高くなる傾向があります。建築制限が厳しく、屋根や外壁などには不燃材、防火ドアや防火窓などを設置しなければなりません。そのため、建材費のコストがかさんでしまいます。
一方で火災保険料がお得に
建築費用は高くなりますが、耐火性能が高いと火災保険ではT構造(耐火構造)に分類されるため、保険料が割安になります。これは、防火地域・準防火地域の土地に関わらず、指定なしのエリアでもコンクリート建造物や耐火建築物などの条件を満たせば適用される割引です。
防火地域・準防火地域に家を建てるとデザインや広さが変わる?
写真⑥新築の上げ下げ窓-min.jpg 63.65 KB続いて、デザインや広さについて見ていきましょう。防火地域・準防火地域の制限によってどのような違いがあるのでしょうか。
デザインに影響がでる
防火地域や準防火地域の制限に従うと、デザインに影響がでてくるでしょう。例えば、防火窓や防火ドア、防火シャッターなどを設置したり、外壁や屋根などに不燃材を使用したりする必要があります。そのため、希望通りの外観が叶わないかもしれません。
建ぺい率が緩和される
防火地域・準防火地域の調べ方
写真⑦街づくりを調査する作業員とOL-min.jpg 85.43 KB防火地域や準防火地域に家を建てると、コストやデザイン面に影響があることがわかりました。そのため、家を建てる前にその土地が防火地域または準防火地域の指定エリア内なのか知る必要があります。
防火地域・準防火地域は、不動産会社や施工会社に依頼したり、役所へ行って調べたりするとわかります。また、インターネットで検索するのもいいでしょう。「市町村名+防火地域」と調べてみてください。各市町村の都市計画図をチェックすると防火地域・準防火地域かどうかがわかります。また、東京都の場合「新たな防火規制区域」についても確認する必要があります。新築はもちろん、建て替えの際もしっかり確認しましょう。
準防火地域と他エリアに建築予定地がまたがった場合
検討している土地を調べると、準防火地域とその他地域にまたがっていることがあります。その場合、より厳しい制限が建物全体に適用されます。面積比は関係なく、わずかでもまたがっていれば適用になるので注意しましょう。
なお、「第一種住居地域」など土地利用について指定される用途地域の場合は、かかる面積がより大きい地域の制限が全体に適用されます。また建ぺい率や容積率は加重平均により計算されます。防火地域とは考え方が異なるので混同しないようにしましょう。
準防火地域が他エリアにまたがるときの具体的な制限は以下の通りです。
事例1:準防火地域と指定のない区域
建物全体が準防火地域の制限を受けます。
事例2:準防火地域と指定のない区域(防火壁あり)
指定のない区域側に防火壁を設置すると、防火壁から先は制限がなくなります。
事例3:準防火地域と防火地域
より厳しい防火地域の制限が、建物全体に適用されます。
事例4:準防火地域と防火地域(防火壁あり)
準防火地域側に防火壁を設置した場合、防火壁までが防火地域の制限を、防火壁の先が準防火地域の制限を受けます。
事例5:別棟で分けて建てる
家づくりの不安・疑問はR+houseネットワークの工務店へご相談ください!
写真⑧福岡県_黒いガルバリウム鋼板の平屋-min.jpg 504.73 KB防火地域や準防火地域に加えて、法22条指定区域や新たな防火規制区域と、さまざまな区域が設けられていることがわかりました。家を建てたいと考えていた土地が、防火地域や準防火地域などの指定エリアだった場合、費用や間取りに不安を感じるかもしれません。R+houseネットワークの工務店では、後悔しないための賢い家づくり勉強会を定期的に実施し、家づくりに関する不安や疑問についてお答えしています。防火地域・準防火地域で注文住宅を検討されている方や、指定エリア外で土地を探し直したいと考えている方は、是非一度R+houseネットワークの工務店へご相談ください。
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