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注文住宅の基礎知識

擁壁とは?住宅を建てる上で知りたい基礎知識とトラブル対策を解説

更新日 2025.05.20 / 公開日 2025.05.13
#新築 #注文住宅 #一戸建て #マイホーム

擁壁とは、高低差のある場所に宅地を造るときに土砂崩れが起きないようにする構造物です。擁壁にも種類があり、造る際の法律が定められています。状態のチェックやメンテナンスを怠ると、トラブルに発展する可能性も。あらかじめ擁壁に関する注意点・対策法を知り、家づくりに役立てましょう。これから擁壁の新設工事を検討している方や、購入予定の土地に擁壁がある方は参考にしてください。

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目次

新設された擁壁
写真②新設された擁壁.jpg 97.64 KB
擁壁とは、がけの土が崩れないよう保護する壁状の構造物です。日本には斜面の土地が多くあり、高低差のある場所に宅地を造るときに擁壁が用いられています。建物を支えている地盤は台風や地震で緩む恐れもあるため、土砂崩れを防ぐ役割もあります。
2m以上の擁壁は、建築基準法に則った建築確認の申請が義務です。また、自治体によってはがけ条例が定められており、土地と道路に2m以上の高低差がある場合は擁壁が必須になることも。その他、擁壁がないと、がけから一定の距離を置かなければ住宅が建てられない場合もあります。
ここでは、素材や構造の異なる3種類の擁壁をピックアップしました。それぞれの特徴・耐用年数についても解説します。
コンクリート擁壁は、強度があり耐用年数が高いことが特徴で、鉄筋が埋め込まれたものとそうでないものに分かれます。全面がコンクリートのため水抜き穴が必須となり、耐用年数はおよそ30~50年です。

鉄筋コンクリート擁壁

鉄筋コンクリート擁壁とは、RC擁壁とも呼ばれる、鉄筋が入ったコンクリートの擁壁です。片持ち梁式と呼ばれる逆T型やL型、控え壁式などの構造が挙げられます。斜面に対して擁壁を垂直に建てることもできるためすっきりした見え方が特徴。無筋コンクリート擁壁に比べ強度・耐震性能が高いことがポイントです。

無筋コンクリート擁壁

鉄筋を通していない無筋コンクリート擁壁は、もたれ式や重力式といった構造があります。擁壁自体の重さで土の圧に抵抗する構造となっており、比較的地盤の状態が良い場所で用いられる擁壁です。
練積造擁壁は、低価格で軽量な間知ブロックやコンクリートのブロックを積み上げて造ります。使用するブロックのなかには国土交通省で認められたものもあります。耐用年数の目安は20~40年。ブロックの間をコンクリートで固め、擁壁を斜めに建てる点が特徴です。古くから使われてきた造り方で、斜面にある住宅地など高低差が大きな場所にも建てられます。コストはコンクリート擁壁より少し下がります。

参考元:国土交通省|宅地擁壁について
加工して成型した石や天然石を積み上げて造るのが石積擁壁です。現在の法令では基準を満たしておらず、他の擁壁に比べ強度が劣るため、安全性・耐久性に十分注意が必要です。例として、軽石を積み上げる「大谷石積擁壁」や、コンクリート・モルタルを流し込まずに石を積み上げる「空石積造擁壁」があります。

参考元:国土交通省|宅地擁壁について

電卓の前で話し合う3人
写真③電卓の前で話し合う3人.jpg 47.23 KB
擁壁の新設・補修にあたり、気になるのが費用。それぞれの工事の費用についてポイントを解説します。
まず現地調査を行い、立地を確認しましょう。隣の土地との高低差や境界線の状況によって建てられる擁壁の種類・構造が変わり、それに伴って費用も変化します。また、高さ・面積も大きくコストに関わってくる要素です。新設する場合の費用はそれぞれ1㎡あたり、鉄筋コンクリートでは3~11万円、練積で2.8~7万円、石積の場合は2.5~5万円が目安となります。他にも、土の運び出しなど諸費用がかかる場合もあるため注意しましょう。
建て直しには、新設工事の費用に加え、既存擁壁の撤去や土の運び出しなどの費用がかかります。また、建て直しでも必ず現状の擁壁の確認が必要です。既存の擁壁が隣の土地との境界線に干渉している場合は、トラブルが発生する恐れも。建て直しにあたり、隣の住人と工事費用の負担の割合を決めることもあるため、慎重に進めましょう。
土地に既に擁壁がある場合は、ひび割れ・隙間を補修する必要性があることも。新設や建て直しよりもコストは抑えられますが、この場合も必ず専門の会社・住宅会社を通して現状確認をしましょう。費用の目安としては、ひび割れ1mあたり3万円から補修ができます。ブロックの隙間に充填剤を入れ込む補強は1㎡あたり4~10万円程度、水抜き穴の新設は1ヶ所あたり3万円程度になるでしょう。

六法全書
写真④六法全書.jpg 91.85 KB
建築基準法と宅地造成及び特定盛土等規制法では、擁壁に関する規定が定められています。その他、自治体独自の条例があることも。住宅会社や専門の会社に相談する際、自分でも擁壁の規定について知っておくと役立つでしょう。
建築基準法では、がけ崩れなどの可能性がある場合、擁壁の設置をはじめとした安全措置を取らなければならないと規定されています。建築基準法施行令では、高さが2m超の擁壁についての詳細な規定が定められており、以下のような例が挙げられます。

・鉄筋コンクリートや石といった腐食しない材料を用いる
・石を用いる場合はコンクリートで背面や裏側の空間を埋め、間を十分結合させる
・排水のため水抜き穴を設け、その裏面には砂利など排水性の良い素材を用いる

擁壁を建てる場合、このように建築基準法で決められた内容と同等以上の構造にしなければなりません。

参考元:e-Gov 法令検索|建築基準法
参考元:e-Gov 法令検索|建築基準法施行令
宅地を造る上でのがけ崩れ・土砂の流出などの被害を防ぐために定められた、宅地造成及び特定盛土等規制法。切土や盛土によって生じたがけには、コンクリートか練積の擁壁で覆う必要があると定められています。また、その擁壁の種類・構造における詳細な規定が示されていることもポイントです。いくつか例を見てみましょう。

・コンクリート擁壁は、土圧などにより壊れたり転倒したりしないことを構造計算によって確かめる
・擁壁の面積3㎡以内に、少なくとも一つの水抜き穴を設ける

既にある擁壁が法律に適合しているか知りたいときは、住宅会社や専門の会社に相談してみることも一つの手です。

参考元:e-Gov 法令検索|宅地造成及び特定盛土等規制法施行令
建築基準法には、各自治体が建築物の安全のために必要な制限を付加できるという内容が含まれています。そのため「がけ条例」という、がけに面する場所に建物を建てる場合の規定が自治体により定められています。内容は自治体により変わるため、マイホームを考えているエリアのがけ条例を参考にしましょう。

参考元:e-Gov 法令検索|建築基準法
基準を満たしている「適格擁壁」には検査済証が発行されます。住宅を新築する上で既に土地に2m以上の擁壁がある場合は、まず検査済証を確認してみましょう。自治体の役所でも、検査済証の確認ができます。もし基準を満たしていない場合は「不適格擁壁」となり、住宅の建築が困難です。

注意を呼びかける男性の手
写真⑤注意を呼びかける男性の手.jpg 49.92 KB
擁壁を新たに造る場合と土地に既にある場合、どちらの場合でも注意したいポイントがあります。ここでは3点ピックアップしてご紹介します。
地盤が弱いときに起こるのが、擁壁を支えきれないことによるトラブル。例えば、地盤沈下や擁壁の沈み込み・傾きが考えられます。トラブルを防ぐには、住宅と擁壁の重量に耐えられる地盤が必要になります。地盤調査を行い、土地の地盤状態が弱いと判断された際には地盤改良を行いましょう。
新しく住宅を建てるため購入する土地に擁壁がある場合は、必ず状態をチェックしておきましょう。擁壁が古く、現行の法律の基準に適合していない場合には建て直しが必要になります。建て直しが必要でなくとも、擁壁が劣化していないか、状態を確認しておくことがおすすめです。擁壁の危険度について確認ができる、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」活用することも一つの手です。

参考元:国土交通省|我が家の擁壁チェックシート
法律での規定を守っている擁壁でも、経年で地盤状況が変化し自然災害等で安全が脅かされる恐れがあります。そのため、耐用年数を守ったり、定期的に状態を確認しメンテナンスをしたりすることが重要です。その際、国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」「宅地擁壁老朽化判定マニュアル」が参考になります。自分では難しい場合は、信頼できる住宅会社や専門の会社に相談すると良いでしょう。

参考元:国土交通省|宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)
参考元:国土交通省|宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル

困り顔の男女
写真⑥困り顔の男女.jpg 68.37 KB
擁壁は、さまざまな要因からトラブルに発展することがあります。ここでは、擁壁に関わるトラブルを3つご紹介します。対策も解説するため、是非参考にしてください。
擁壁の耐用年数を守らなかったり、大規模な災害が起きたりして周辺に損害を与えることがあります。擁壁自体が崩れるだけではなく、擁壁に問題があり土砂崩れなどに発展することもあるでしょう。その場合、周囲の住宅を損壊させるのみならず、人の命に関わるリスクもあります。土地の購入の際には擁壁の状態を確認し、入居後も定期的なメンテナンスを行ってひびや傾きといった問題がないかチェックしましょう。
隣の住宅と擁壁を共有している土地は多数存在します。共有している擁壁の補修が必要になった際、費用負担に関わる責任問題のトラブルが起こることも考えられます。また、擁壁の工事は共有者全員の同意がなければ行えないことも。新しく擁壁を建てる・購入する土地に擁壁があるときのどちらも、隣の住宅との境界線がどこにあるか確認しておくことがポイントです。
一見きれいな擁壁でも、実際は建築確認申請が通っていないことも考えられます。その際に気を付けたいのが、擁壁を建て直さないと住宅が建てられない、建て方に制約が出るといったリスクです。それに伴い、家づくりのスケジュールが延びて、費用がかさむこともあります。信頼できる不動産会社や住宅会社に相談したり、建築計画概要書・検査済証があるか自治体の役所で確認したりすると良いでしょう。

庭がフェンスで囲われた黒と木目の外観
写真⑦栃木県_庭がフェンスで囲われた黒と木目の外観.jpg 410.11 KB
今回、擁壁とはどのようなものかという基礎知識から、トラブル例と対処法までご紹介しました。擁壁には法律による規定があり、専門的な知識が必要になることも少なくありません。R+houseネットワークの工務店では「擁壁を新設したい」「土地に既に擁壁がある」どちらのケースでもアドバイスが可能です。マイホームの擁壁に悩んだ際には、是非家づくりのプロであるR+houseネットワークの工務店にご相談ください。

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