建築家に学ぶ、良いデザインとは

「ウチの内」と「ウチの外」、2つの空間から構成される家

今回は小さな敷地のなかでも開放感と居心地の良さを感じられるようにと、白子さんの創意工夫がこらされた家の紹介です。

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建築家 白子秀隆

建築家 白子秀隆
白子秀隆建築設計事務所

1976年神奈川県生まれ。2000年に東海大学大学院工学研究科を修了した後、いくつかの建築設計事務所を経て、
2008年に白子秀隆建築設計事務所を設立。
何をするでもなく、ただ居心地がよいと感じられる場所。白子さんが提案したいと考える住まいは、住んでいてシンプルに「気持ちよい」と思える住まいです。
そして、自然と室内が繋がったような、ニュートラルな空間をつくりあげることにこだわりを持っています。
既にある枠組みに捉われることなく、楽しみながら自由な発想で家づくりをすることを大切にしています。

「ウチの内」と「ウチの外」、2つの空間から構成される家 画像2

ミナモグレーの外壁と木製ルーバーの対比が印象的な道路側からの外観。
「ウチの内」と「ウチの外」の空間構成を表現しています。

外壁とルーバーの対比が印象的な外観

グレーの外壁と木製ルーバーが特徴的なこの家は、
都内の小さな敷地に建つコンパクトな住宅です。
R+houseのオリジナル外壁材「ミナモグレー」を採用しており、シンプルで落ち着いた雰囲気の外観となっています。
この家の敷地は交通量の多い道路に面しており、5階建ての大きなマンションとアパートが隣接しています。
このような条件のなかで、周囲の視線やプライバシーを配慮し、なおかつ自然の光や風を取り入れることのできる家にしたいと白子さんは考えました。
道路側の外観は、左側は窓をいっさい無くし、右側はルーバーを取り入れることで外からの視線を遮っています。
白子さんは半外部的な場所を内部に取り入れるため、細長い2階建ての住居を「ウチの内」と「ウチの外」のふたつの領域に分けました。
この家のテーマである「ウチの内」と「ウチの外」の空間構成を、外壁とルーバーの対比で表現した住空間となっています。
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自転車や観葉植物を置いたり、自由な使い方のできる外のような土間空間。
2階の窓からたっぷり光が注ぎ込みます。
一段上がった廊下は縁側のように座ってくつろぐことができます。

光が降り注ぐ明るい土間空間

「ウチの外」となる場所は、玄関から裏庭までまっすぐに土間が続き、唐松の縁甲板に包まれた素材感のある外のような雰囲気になっています。
戸外と屋内の中間領域である土間は、サイクルガレージとして使ったりガーデニングをしたりなど様々な用途で使うことができます。
使い道が限定されない、自由でフレキシブルな場所をつくりだすことにより、暮らしに余裕が生まれます。
1段あがった廊下は縁側のような場所として使うことができます。
ご近所の人が訪ねてきたときなど、靴をぬがずにここに座っておしゃべりすることができ、コミュニケーションの場としても最適です。土間部分は吹き抜けになっており、2階の階段部分に大きな窓を設けることで明るさを確保。天気の良い日は縁側に座り、上部の窓から降り注ぐ光を浴びて日向ぼっこもできます。
「居心地が良い」と感じられる家をつくりたいという、白子さんの思いが詰まった素敵な場所ですね。
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LDKとの境に木製のガラス戸を設けることで、室内にいながらも窓辺越しに外を感じられます。吹き抜けの光もたっぷり降り注ぎ、明るい雰囲気です。

室内にいながら外を感じることのできるLDK

土間空間から半階上がった踊り場を通って2階のテラスに続き、外部的な空間が途切れることなく連続しています。
「ウチの内」となる場所にはLDKや寝室を配置し、「ウチの外」との間に木製のガラス戸を設けました。壁で仕切らずガラスにすることで、吹き抜けにある大きな窓からの採光を取り入れるのと同時に、室内にいながらも窓辺越しに外を感じることができます。
また、ガラス戸越しに家族の気配を伝えることができ、自然と会話の機会が増え安心感も得られます。
2階のテラスとLDKも大きな窓で仕切られ、開ければテラスとリビングが一体化します。
ガラスを上手く取り入れることで内と外の境を曖昧にし、開放的な雰囲気を生み出しています。
「内と外」の性格の異なる領域を並列させることで、限定された小さい敷地のなかでも緩やかで住み心地のよい空間となりました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
周囲にマンションやアパートがある立地条件のなかでも、光や風を家全体に取り込むための
さまざまアイデアがつまっていますね。皆様の家づくりの参考になれば幸いです。

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