建築家に学ぶ、良いデザインとは

非日常を取り入れた住宅デザイン

建物が隣接する敷地でいかにして景色を取込み、周りの視線を気にせずリラックスできる空間がつくりだせるのか。
田辺さんの住宅デザインを見ていきましょう。

非日常を取り入れた住宅デザイン 画像1
建築家田辺 真明

建築家 田辺 真明
田辺真明建築設計事務所

1972年愛知県生まれ。2013年に田辺真明建築設計事務所を設立。
田辺さんは描いた1本の線が物質となることで内と外・内と内との境界を生み出していく重要性を考慮し、
その土地の持つ本質を読み解くことを大事にしています。
クライアントの要望を咀嚼し、様々な可能性の模索を繰り返すことで、環境や人の心を豊かにする住宅をデザインします。

非日常を取り入れた住宅デザイン 画像2

南側の窓と吹抜けからの優しい自然光を取り入れたLDK。
水回りの動線をコンパクトにするために、必要諸室を全て北側にまとめました。

下屋のあるモダンで美しい外観

今回の計画地は、建物の南側に庭を取るかたちの敷地が並ぶ、郊外の住宅地にありました。
もともと1つだったものを2つに分筆した敷地であるため、連続性が阻まれることで隣地に及ぼす影響や斜線制限についても考慮する必要がありました。
そこで屋根を一段下げた下屋となる部分をつくり、建物に隣接する部分や配置的に周囲より突出する部分の高さを抑えました。
2階の屋根と下屋の屋根の角度を変えることで、モダンで美しい外観となっています。
また周囲より突出している部分には窓をなくし、内部の様子が分からないように配慮されています。
こうすることで、カーテンやシャッターを閉め切った状態で暮らす必要がなくなりました。

非日常を取り入れた住宅デザイン 画像3

家を訪れたお客さまにも中庭を楽しんでもらえるよう、
シンボルツリーが見える位置に大きな窓を設けておもてなし。

空とつながる中庭

今回「プライバシーの確保と上質な住空間の提案」が欲しいというご要望がありました。
敷地の南側は道路を挟んで住宅が建ち並び、眺望を期待できる周辺環境ではなかったことから、田辺さんは外部とのつながりを空だけ残して遮断した中庭をつくりました。
屋外でありながらプライベートな空間である中庭は、隣家の視線を遮るのと同時に、住宅との比較部分をつくることで非日常の開放感と心地よさを感じることができます。
エントランスには中庭の木が見えるように大きな開口をつくり、来訪者も景色が楽しめるようになっています。
LDKは西側の開口を制限することで、南側の開口を強調するつくりにしました。
採光不足にならないよう吹抜けからの自然光も取り込み、ほどよく優しい明るさの落ち着いた雰囲気となっています。

非日常を取り入れた住宅デザイン 画像4

ギャラリーのような通り土間。
壁に飾った写真が映えるようにあえて他の部分の明るさを抑えています。

ギャラリーのような通り土間

南側の玄関からシューズクロークまでの間には、長さのある通り土間をつくりました。
ここには趣味の写真を飾る計画です。
あえて全体的に薄暗い空間にし、狭い範囲を照らすスポットライトを配置することで写真に視線が運ばれるように工夫されています。
ギャラリーのような非日常感のある素敵な空間ですね。
玄関から、この長い通り土間を歩き徐々にリラックスした所で、一日の疲れを癒す場所に帰る。
日々の喧騒から解放されゆっくりくつろげるようにという田辺さんのアイデアが光る演出です。
利便性だけでなく、あえて程よく不便さのある空間をつくることで心身をリフレッシュできる住宅となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
敷地の制限をメリットに変え、プライバシーを確保しつつも開放感のある住宅となっています。田辺さんの創意工夫が伺えますね。
皆さまのお家づくりの参考になれば幸いです。

過去の記事をもっと読む