―先生は、様々な住宅会社の営業支援をなされていますよね。住宅会社を見極めるうえで「これは聞いておいた方がいい」という質問があれば、教えていただきたいです。
山本先生:たくさんありますが、今日のテーマは、営業現場でよく聞かれる、「自己資金はいくらあれば安心ですか?」という質問で考えてみましょうか。
―どう答えてくれる住宅会社がいいのでしょう。
山本先生:例えば「自己資金は多いに越したことはありません!」という回答では全く答えになりませんよね。であれば、きちんと根拠を示し、それに基づいた"計算"のうえで、その目安を提示してくれる会社であればお客様はとても安心できると思いますね。それらの小さな積み重ねがやがて大きな信頼につながっていくと思います。今日は、簡単に計算のステップの概要をお伝えしますね。
―よろしくお願いします!
山本先生:ステップは大きく3つです。まず①「物件価格+諸経費」で、必要になる総額を出します。次に②「毎月無理なく返済できる金額からみて、いくらまでなら借入れが可能か?」を算出します。このとき気を付けたいのは「今の年収なら銀行はいくらまで貸してくれるか?」という視点ではなく、あくまで「今の家計からみて毎月いくらまでなら無理なく返済が可能か?」で計算することです。というのは、前者で計算すると後者より、多めの借入れが可能になってしまうことが多々あるからなんです。そして最後に①から②を引き算する(③自己資金)。これだけで、必要な自己資金の目安が分かるんですよ。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 15_21_21.png 1.22 MB例を出してみましょうか。物件価格が4,500万円(消費税込み)の住宅だとします。初年度に絶対に必要となる諸経費(登記料等)を物件価格の5%と見ておくと、4,500万円×1.05で、必要総額は4,725万円になります。これを自己資金と借り入れで調達するわけです。
―物件価格だけじゃなく、諸経費も入れて考えないといけないのですね。
山本先生:そうなんです。住宅購入時には、物件価格以外に様々な諸経費がかかるんです。代表的なものとして、登録免許税や不動産取得税、登記手数料、ローン関連費用、仲介手数料などがあり、ほかにも引越代や照明器具代なども発生します。これらのうちどこまでを諸経費とみなすかによってその金額は大きく違ってくるのですが、最低限必要になると思われる、法令で定められた税や登記手数料、ローン関連費用等の合計額は、新築注文住宅の場合、物件価格の概ね4~7%程度になると言われていますね。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 15_11_41.png 1.11 MB次に②「毎月無理なく返済できる金額」から「借入限度額」を計算します。例えば、毎月の返済額を14万円、ボーナス時の加算額を20万円(年2回)、返済期間35年、金利3%としてシミュレーションをすると、この方が無理なく借りられる金額の限度は、およそ4,504万円になります。
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―毎月の返済可能額から、借りられる上限が出るんですね。
山本先生:あくまでシミュレーションですが、だいたいの金額は掴めます。最後に、①の4,725万円から②の4,504万円を引き算します。すると、必要な自己資金は221万円という計算になります。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 15_24_41.png 1.25 MB繰り返しますが、これは計算方法を説明するための、あくまでサンプルの数値ですよ。実際には物件価格や適用される金利や返済期間、諸経費率、さらには金融機関の融資条件等によって数字は大きく変わりますからね。大事なのは、②の「毎月の返済できる金額から借入限度額をつかむ」というステップをしっかりやってくれるかどうかです。「①家を建てるのに必要な総額の把握→②借入限度額の把握→③自己資金の算出(①から②の引き算)」という順番さえ押さえておけば大丈夫です。
―では、例えば手元にそれ以上の預貯金があるとしますよね? その場合はすべて自己資金として出したほうがいいんでしょうか?
山本先生:いやいや、それは「ちょっと待った!」ですね。「人生一瞬先は闇」なんです。突然一家の大黒柱が失業した、病気で長期療養を余儀なくされた、などなど予期せぬことが起きるのが人生です。そのとき手元に現金がないとたちまち家計がひっ迫します。そのためにも手元にはある程度の現金が必要なんです。一般的に言われていることとして、「基本的には毎月の生活費の6ヶ月分を。共働きで収入が安定していて万一の場合の保障も充実している世帯なら3ヶ月分を。自営業者や片働き世帯、収入変動の大きい世帯などなら12ヶ月分を」手元現金は残しておくこと、という説がありますが、これらは世帯ごとに事情が異なりますので、まずはそこのところをしっかり把握し手元現金を確保したうえで、いくらまでなら自己資金として出せるかを考えていく必要があると思いますね。
―なるほど。これらを含めて分かりやすく説明してくれるか、会社の説明力も見極められますね。
山本先生:まさにそこですね。「自己資金は多い方がいいですよ」とか「ざっと〇〇万円くらいですかね」とか、ザックリとした話ではなく、「お客様の場合、自己資金は○○万円以上あれば、ある程度安心して進められると思います」というように、一人ひとりの条件に合わせて具体的な金額で考えてくれる会社かどうか。これが、良い会社を見極めるポイントになると思います。また、反対に自己資金が足りない場合はどうするか? これはまた別の機会でお話できればと思います。
―漠然とした考え方ではなく、様々なケースも考慮したうえで、自分に合った具体的な金額を教えてくれるかどうか、なんですね。
山本先生:そうなんです。さらに、この②で出した借入額をもとにすれば、住宅ローン減税でどれくらい戻ってくるかも合わせて計算できます。実質的な負担がどれくらい軽くなるのかまで含めて説明してくれると、より安心して判断できますよね。
―借入額から、必要な自己資金だけでなく、減税額まで見えてくるんですね。
山本先生:そうなんです。それともう一つ。住宅ローンには、多くの場合「団体信用生命保険」、いわゆる団信が組み込まれています。返済中に万が一のことがあった場合、その時点でローンの残りがなくなる仕組みです。これによって、いま入っている生命保険の無駄な部分を削ることで、保険料を下げることも可能になるんですよ。また、全額を自己資金で払ってしまうとこの保障を持たないことになりますから、そのあたりまで説明してくれる会社かどうかも、あわせて確認しておきたいですね。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 16_22_58.png 1.37 MB
―「自己資金をいくら出せば安心か?」という一つの質問だけで、こんなに色々なことが見えてくるんですね。
山本先生:住宅会社を検討している方は、感覚ではなく、こうした計算の裏付けをもって、色々な角度から一緒に考えてくれる会社を選んでもらえるといいですね。
■ご回答いただいた専門家の先生
ChatGPT Image 2026年8月4日 12_50_32 (1).png 1.08 MB山本 嘉人 先生 |Yamamoto Yoshito◇プロフィール幅広い実務知識に基づいて構築した戦略的情報システムを住宅営業に取り入れ、顧客の抱える諸問題を解決しながら成約に持ち込む複眼的なコンサルティングには定評があり、その活躍は多数の専門誌や 新聞などに記事として取り上げられている。開発したFPソフトは大手住宅メーカーを始め全国の工務店、不動産会社、生命保険会社、金融機関等に採用されている。また、独自のリスクマネジメント手法を 駆使したマイホームセミナーや、中高年層を対象とした相続不動産セミナーは全国で好評を博している。
◇ 講演実績東京電力、日本生命、あいおい損保、住宅金融支援機構、 金融広報委員会(日銀)、JA 他
◇ 制作・著作住宅・不動産・相続に関する著者や論文、コラムなど多数あり
◇ 資格ほか1級ファイナンシャルプランナー、CFP、公認不動産コンサルティングマスター、社会保険労務士、行政書士、2級建築士、宅地建物取引士 他