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GPIFの運用損が公的年金の破綻を招くとして、問題視された理由とは

近年、GPIFが5.3兆円の運用損を出してしまったと話題になりました。ですが、その事実はそこまで大きな問題ではないとされています。ライフプランを考えるにあたり、注意しなければならない問題点とはどこなのでしょうか。

GPIFが年金資金を運用することは「バクチ行為」なのか

つい先日報道された番組の中には、GPIFが5.3兆円の赤字を出してしまったことについての批判が相次ぎました。番組内では視聴者に誤解を与えるような意見も目立ちます。それはこの記事に関するものです。

<公的年金、将来に不安もGPIF15年度運用損5.3兆円>

(日本経済新聞平成28年7月30日付)

『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は29日、公的年金の2015年度の運用実績が5兆3098億円の赤字になったと発表した。

5年ぶりに運用資産額が減った。

円高や株安が響き、国内株式などの評価損が膨らんだ。』

GPIFとは何か?

GPIFとは年金積立管理運用独立行政法人のことです。主にGPIFは支払いが完了した年金保険料に含まれている、余った積立金の管理や運用に携わっています。GPIFが運用している資産額は、平成27年度末の時点で約134兆7千億円にものぼります。世界的に見ても、年金管理法人としては最大規模の資産額です。
この資金は主に債券や株式で運用されており、ニュース記事では平成27年における運用実績が利回りにすると3.81%減少し、金額に換算するとおよそ5.3兆円赤字になったと記されています。GPIFが株式市場で運用していることを考えると、プラスやマイナスなどの変動は起こりがちです。

平成27年度は中国だけでなく、その他新興国の景気不安も重なりました。そのため、日経平均の動きもかなりあったのです。多少の変動は仕方がないと感じられるような情勢でした。

しかし、この結果が政府への反発やGPIFの批判の対象となってしまったのです。それは、平成26年に国が資産を運用する際の割合を変更したことにあります。政府は国債を60%から35%に引き下げをし、国内外の株式を12%から25%、合計にすると50%の引き上げを行いました。株式の割合を倍近くにすることで、GPIFの運用実績が以前よりも株価の変動に影響しやすくなったと言えるからです。

野党などは「株式の投資比率を倍にした政権の責任により、運用実績がマイナスになった」と批判します。同様に、番組内でも「年金積立金が結果的にアベノミクスの株価対策に使われている」という発言が目立ちました。最終的には「政府がバクチのような行為をし、その清算を国民が行っている」とまとめています。

年金基金は世界的に見ても株式運用が多い事実

運用実績に対する批判では、主に2つの点に誤りがあるようです。1点目は株式運用を「バクチ行為」と表現することにあります。そもそも、年金資金は長期的な投資がベースです。黒字を続けている企業は、その価値も高まっていきます。そうした企業への投資を行うことにより、長期的には株価の上昇する結果となります。世界を見ても年金基金の運用する際は、株式を中心として行うのです。
例えば、ノルウェー政府年金基金は60%を株式で運用します。また、カリフォルニア州職員退職年金基金であるCalPERSは61%、カナダ年金制度投資委員会のCPPIBは72%もの年金基金を株式運用中心に扱っているのです。確かに平成27年度は日経平均が下がってしまったため、この年は5.3兆円ほどがマイナスとなりました。ですが、26年度の場合は15.3兆円のプラスとなっていますし、25年度も10.2兆円とプラスの運用実績です。長期運用が必要な年金基金であれば、単純に1つの年度だけを捉えるのではなく、前年度などと比較して見ることが大切になります。それに加えて近年では、日本の国債がマイナス金利となっています。投資家たちの間でも「日本の国債で財産を運用したほうがよい」という考えは少ないと聞きます。

GPIFは年金の支払いを行っている組織なのか

2点目の誤りは「GPIFの運用実績が公的年金の制度に影響を与えかねない」と話題になっていることです。報道されていた番組では「運用実績でマイナスを出してしまうと、国民年金の負担が大きくなる」という意見がありました。このようなことはあり得るのでしょうか。実際のところ、そのような事実はないようです。元々、日本における年金制度は「賦課方式」を採用しています。つまり、年金を支払う現役世代からの保険料を受け取る形式なのです。日本の年金受給者は、自分たちが支払ってきたお金を受け取る「積立方式」ではありません。
厚生労働省に掲載されている「平成26年度における公的年金各制度の財政状況」によれば、この年度の国民年金や厚生年金の実質的な収支は、合計にして支出が50.5兆円となっており、保険料と国庫負担をあわせた収入が47.8兆円です。要するに、差し引きで計算すると2.7兆円の赤字が出ます。この赤字は、GPIFの年金基金を切り崩すことによって賄うのです。平成26年度の財政状況を見ても分かる通り、年金のおよそ9割以上が年金保険料と国庫の負担で支払われています。GPIFが運用する資産は、今までに国民が納めていた年金保険料の余剰積立金です。以前は年金を受け取る人よりも、支払う人の方が多かったために、結果として積立金が134兆円になりました。ですが近年では、支払う人数が受け取る人数を下回り、収支がマイナスへと転じたことでGPIFの切り崩しが行われています。
このようなことから、GPIFは収支と収入のバランスを和らげるような役割を持っているのです。すなわち、GPIFの運用実績の赤字がすぐさま年金の給付に影響を与えたり、国民の負担が増加するものとは言い難いのです。

年金に関わる上で、GPIFよりも重要な問題点とは

GPIFの投資比率や運用実績の問題よりも、注意しておきたいのは「現在の年金制度がこれから先も持続するかどうか」です。近年の状況を見ると分かるように、日本では少子高齢化が進行しています。このような状況が続くことで年金が「将来の安心」をもたらすことができるかどうかは、大きな疑問です。今後もさらに税や年金を担う人が減少し、受け取る人が増加すると言われています。

現在、政府や自治体でもあらゆる少子化対策が行われています。ですが効果が出た後、年金制度や社会保険制度の安定が見込めるのは、20年以上も先となりそうです。年金や医療に関しても、現在の負担水準で今までのような給付は受けられない状況になるかもしれません。

年金保険料を上げたり、年金受取額を減らす政策、支給開始年齢を遅らせるなどは現在、すでに政府が実施している年金対策です。ですが、これらの政策を同時に行っていかなければ、現在の年金制度に無理が生じます。

また、それによって国民が知りたいことは「今までのような年金制度が持続しないことにより、どの程度の負担水準になるか」ということです。そのような事実がはっきりしなければ「今後のライフプランに影響があるかどうか」や「少子高齢化によって、年金が受け取れないのではないか」などという不安が増えてしまっても仕方がありません。はっきりとした数字を提示すれば、政府だけでなく国民1人1人が、何かしらの対応策を打つこともできます。GPIFの批判的なニュースの中には、そのような将来への不安感が見て取れるのではないでしょうか。報道された番組でもあるように、印象や思い込みだけで誤った判断をしないよう正しい事実を見ることが大切です。住宅購入やライフプランも、将来の年金制度などと合わせて考えると良いでしょう。

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※当コンテンツに記載されている内容については、現在は終了している制度や古いニュースも含まれております。あくまでご参考いただくものでございますので、実際に住宅購入・ライフプランを検討される場合は、現在の情報をご自身で確認の上ご判断ください。