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どうして日本では「貯蓄から投資へ」が広く浸透していかないのか?

「貯蓄から投資へ」と言うスローガンが掲げられるようになってしばらく経ちますが、その流れは遅々として進んでいません。むしろ、日本人の「家計金融資産」を見てみると、依然として「投資」よりも「現金・預金」が主であることが分かります。さて、その原因は一体何なのでしょうか。

日本の家庭に於ける金融資産は投資ではなく現金・預金が中心?

<家計金融資産、7年ぶりに2期連続マイナス4~6月期の日銀統計>
(2016年9月26日付日本経済新聞)
『日銀が26日発表した2016年4~6月期の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する金融資産は6月末時点で前年比1.7%減の1746兆円だった。3月末時点に続き、2四半期連続で前年を下回った。』

日本全体の各家庭に存在している金融資産が総額1764兆円もあると言うデータには驚かされますが、株式や投資信託の評価額に関して見れば、株式相場の下落の影響を受けて減少傾向にあるようです。しかしながら、16.6%減の株式(144兆円)と11.7%減の投資信託(87兆円)に対して、現金・預金(920兆円)は1.2%も増加しています。

そしてこれらを全体の構成比率に換算すると、現金・預金が52%、保険・年金が30%、株式・投資信託が15%、さらに残ったその他の3%と言う結果が現れます。

一方、しばしば比べられることですが、これがアメリカであった場合、現金・預金は14%、保険・年金は31%、株式・投資信託は29%、そしてその他の26%と言う結果に変わります(2015年度時点:平成28年9月金融庁金融レポート参照)。

つまり、日本は現金・預金の比率が他と比べて高い国であると言えます。
実際のところ、アメリカでは家計資産の大半を投資に費やしている為、それに対する配当やキャピタルゲインなどの財産所得が家計のおよそ3分の1にも上ります。反面、日本の家庭に於ける財産所得は勤労所得の約8分の1に留まっています。この原因の一つには、銀行にお金を預けていても利子が付きにくいと言うことが挙げられるでしょう。

有言不実行の「貯蓄から投資へ」

日本の政府は、長い間「貯蓄から投資へ」と言うスローガンを掲げてきました。それは即ち、「間接金融から直接金融へ」とも言い換えられます。
「間接金融」とは、「銀行を通じての資産運用」を意味します。例えば、個人が銀行へ預けたお金は、銀行の資本として別の企業へと貸し付けられます。そして銀行はその企業から利息を取って、お金を運用します。このような、金融機関を中心とした産業支援体制があったからこそ、日本経済は飛躍的な発展を遂げました。しかし、銀行はそもそもの預金者へ、元本を保証した上で、さらに利息分を上乗せして返さなければならない為、実際の運用時はどうしても安全策を選びがちになります。その結果、「晴れの日に傘を貸す」とも皮肉られるような融資が優先され、リスクが懸念される新産業分野や、十分な担保のないベンチャー企業などへの支援は滞り、引いては新産業が発展しづらい社会体制に陥っています。

他方、「直接金融」とは、投資家が自らリスク計算をしながら、企業などへ融資をして資産を運用することを意味します。そしてこれは、株式や社債などへ直接に資金を提供することで、間接金融よりも高いリターンが期待されます。現に、投資を主流とするアメリカでは、こうしたハイリスク・ハイリターンを取る人が多かったからこそ、新産業や新進気鋭のベンチャー企業が台頭してきたと言う歴史があります。
政府が掲げる「貯蓄から投資へ」とは、まさしくそのようなアメリカ式に倣い、直接金融の流れを増やして経済全体を活性化しようとする方針です。また、その為に「NISA(少額投資非課税制度)」も始まるなど、証券税制の優遇措置も誕生しています。

しかしながら、現実の家計を見ると、相変わらず現金・預金の額が増加しており、銀行の金庫に収められているお金は肝心の新産業に需要に応えていませんし、結果的にゼロ金利運用が続く為に個人の財産形成にも役立っていません。

かけ声こそ勇ましいものの、「貯蓄から投資へ」と言う政府の方針は空回りしているのが現状であると言えるでしょう。

どうして日本人は投資と言う選択をしないのか?

一体どうして、日本人は「投資」と言う選択をしないのでしょうか。その理由は、日本人が財産を形成する過程から、徐々に露わになってきます。

そもそも、日本人の平均貯蓄額を年代別に見れば、以下のようになります。
20歳代・・・189万円
30歳代・・・494万円
40歳代・・・594万円
50歳代・・・1,325万円
60歳代・・・1,664万円
70歳以上・・・1,618万円
(「家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯)」2015年11月5日公表より)

これを参照すると、金融資産の実に8割近くが、50歳以上のシニア世代によって保有されていると分かります。
前述した金融レポートに寄れば、この現象は「高齢化による人口構成の変化」と、「家計の資産形成の大部分が退職金に依存していたこと」が主な理由であるとされています。

また、30~40代に於いては、勤労所得が主にマイホームや子育て・教育資金として充てられます。だからこそ、教育費用と住宅ローンの支出が終わり、さらに退職金を受け取れる60歳前後になって、やっと金融資産が形成されることになるのでしょう。
加えて、現在では人口のおよそ68%が平均寿命として80歳以上に達しています。だとすれば、その方々の死後に財産の相続人となる人々の年齢は50代後半くらいだと予想することも出来るでしょう。

要するに、長期間にわたって少しずつ資産を形成していくのではなく、退職金や遺産相続、保険の満期金などによって、50代後半から60代にかけての間に、一足飛びに金融資産が形成されるのが、日本に於ける一般的な流れであるのです。

若い頃は住宅費と教育費に追われ、投資などに対する経験が不足したまま50代後半へと歳を重ね、そこでいざ急に金融資産が形成されたとしても、どのように運用をすれば良いのか分からず、むしろ老後の為の蓄えを目減りさせたくないと保守的な思想を強め、可能な限りリスクを避けようと行動することは、多くの人にとって自然な流れと言えるでしょう。

「貯蓄から投資へ」を有言実行のスローガンへと変える為に!

リスクを背負った経験が無いまま成長してきた人達に、いきなり「投資をしましょう」と誘っても、その反応は芳しくありません。何故なら、若い頃と違って資産の損失を勤労所得で補うことが難しいからです。

家計金融資産の8割近くを保有するシニア世代にリスクを感じさせずに、「貯蓄から投資へ」の社会へと移行させるには、まず株式市場の長期的な安定成長が必要になります。

かつて、日本に於いても株式保有割合が20%程度に上昇した時代がありました。
1990年前後のバブル期、或いは2005年後半~2007年の間に株価が12,000円~18,000円にまで成長した頃のことです。これらの背景には、株の評価額が上がったという事実もありましたが、それと並んで「株価が上がる」と言う期待感がありました。株価が上がる、即ち「損をしない」と言う期待感があれば、必然的に株式投資は増加します。

現在、日本の株式市場の海外投資家比率は6割に達するとも言われています。小泉純一郎元首相による「小泉改革」の際は、株価上昇の要因に海外からの資産流入がありました。それは、日本経済の規制緩和や市場開放と言った政策に対する期待感の表れであったと言えるでしょう。

さて、“今の日本の経済政策”は、海外投資家の目にどう映っているのでしょうか。
魅力的な市場を作り、安定した投資環境を持続的に整えていくこと、これこそが足踏みばかりの「貯蓄から投資へ」を現実の日本経済の歩みとして未来に進めていく最大の鍵と言えるでしょう。

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