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時代に合わせた改定が重要!GDP改定が暮らしに与える影響とは
国内総生産(GDP)とは、「国内で新たに生産されたサービスや商品の付加価値の総額」のことで、その国の経済力を表しています。GDPがアメリカ、中国に次いで多い日本は、世界第三位の経済大国といわれています。
世界経済での評価上昇に必要なGDPとは
先日発表された2017年1~3月のGDPの速報値は、実質成長率が前期に比べて0.5%の増加、年率換算では2.2%の増加でした。
GDPによってその国の経済の動向を確認することができます。GDPが前年よりプラス成長になれば「景気がいい」と判断され、マイナス成長になると「景気が悪い」と判断されます。そのため世界各国のGDPは経済に関わる人々に注目されており、GDPの増加が日本の評価を上げることにもつながるのです。
今回は、そんなGDPが人々の暮らしにどんな影響を与えるのか、考えてみましょう。
改定されるGDPの算出方法
まず、GDPを算出する方法は流動的で、政府によってその時代の経済に合わせた方法となるように改定されていきます。それが現在も続いているのです。
<GDP推計方法見直しへ統計改革推進会議が中間報告>
(2017年4月14日付日本経済新聞)
『政府は、国内総生産(GDP)など経済統計の精度向上策を検討する「統計改革推進会議」の第2回会合を開き、中間報告をまとめた。証拠に基づいた政策立案ができる体制づくりを盛り込んだ。より実態に合った統計データの整備により、課題を正確に把握し、政策効果を高める。』
GDPの算出において昨年の第3四半期(7~9月期)にあった大きな変更のひとつに、企業の「研究開発費」をGDPに加算するようにしたことが挙げられます。国連による世界的な計算基準の改定があり、それに伴って変更されました。これまで研究開発費は、企業会計では「資産」として計上され、GDPの統計では「費用」とされていましたが、GDPに算入されるようになったのです。
研究開発費がGDPに加算されることで、各国のGDPも増加したと考えられており、アメリカでは3.0~3.6%、フランスでは2.4%、イギリスでは1.6~2.5%増加したといわれています。日本でも同様にGDPは約3%増加したとみられており、その金額は15兆~20兆円にもなります。
研究開発費だけでなく、今後はインターネット通販などのサービス産業もGDPに算入されていくと考えられます。今までは実態の把握が難しかった産業も、GDPへ算入されるようになるでしょう。
GDPの算出方法改定は経済成長を伴わない「ごまかし」なのか?
今回の改定には否定的な意見も多い
GDPを算出する方法を改定する上で、「経済を良く見せるために政府が行うごまかしである」といった意見や、「GDPの数字だけが良い値になっても、実際の景気が良くなっているわけではない」などの否定的な意見が多くあります。これらの意見には、「平成32年までに名目GDP600兆円を達成」という安倍政権が掲げている経済成長の目標に対する皮肉や、政府への不満といったものも含まれているでしょう。
安倍政権が掲げた「名目GDP600兆円」という目標を達成するには、現在500兆円程度のGDPを、4~5年で100兆円も増やす必要があります。そのためには今まで1%程度だったGDPの成長率を、毎年3~4%程度に上昇させる必要があるのです。多くの有識者やマスコミは、目標の達成は困難であると考えました。したがって経済の成長ではなく、GDPの算出方法を変えることで名目GDP600兆円の目標を達成したことにするのかと批判的な意見を述べています。
企業の売上金額とGDPは考え方が異なる
一般的な企業では、これまでと計算方法を変えて売り上げや利益の目標を達成したということにはできないでしょう。しかしGDPにおいては少し事情が違うかもしれません。GDPは国連が国際基準を定めており、その基準には世界各国の経済活動を比較できるようにするという目的があります。研究開発費についても、他の先進各国はいち早くGDPへの算入を進めており、日本の対応は比較的遅い方でした。
時代の流れによって経済も変化しており、今までのGDPの算出方法では経済の実態が分からない分野もあります。日本ではネットショッピングが普及しているにも関わらず、百貨店やスーパーマーケットなどの売り上げだけを統計に反映させても、経済の実態は明らかにならないでしょう。
その国の「名目GDP」と「株式時価総額」には相関関係があり、GDPが停滞することは、株価の下落にもつながっていきます。それは国力の低下とも無関係ではありません。経済的に適正な評価をされるためにも、GDPを国際基準に沿って算出するのは当たり前のことでしょう。また時代に合わせて変化させていくことも重要です。
適切な統計方法によって日本の経済を把握することが、正しい政策を行うことにつながるはずです。
私たちの生活を豊かにするために必要なGDPという指標
GDPと住宅分野の関係
GDPは「新たに生産されたサービスや商品の付加価値の総額」であるため、レンタルやリース、中古品の購入といった現在あるものの売買やシェアにおける費用は含まれません。しかし中古品をリメイクして販売するサービスや、複数の人でひとつのものをシェアするサービスは増えてきています。GDPに反映されないものであっても、私たちの経済において存在感を示すものはいろいろあるのです。住宅分野もそのひとつでしょう。
GDPに算入されるのは新築物件のため、中古物件の購入が増えてもGDPは増加しません。また不動産屋の仲介手数料もGDPには算入されませんし、リフォームの費用も正確に反映しているとはいえないでしょう。住宅分野においてGDPを増加させようと考えた場合、空き家が増加し問題になっているにも関わらず、新築物件を増やしていくしかないのです。
GDP項目の変化は企業にも影響を与えるものである
GDPに算入される項目の変化は、経済政策にも表れてきます。そしてそれは私たちの生活にもつながってくるはずです。研究開発費がGDPに算入されたことで、企業にも影響を与えることが以下の記事からもうかがえます。
<車の研究開発費最高AI・自動運転に的国内7社、今年度3兆円迫る>
(2017年5月20日付日本経済新聞)
『日本の乗用車大手7社の2017年度の研究開発費が3兆円に迫っている。16年度と比べて約7%増え、過去最高の2兆8500億円になる見通しだ。』
政府は企業の研究開発費の税額控除をより大きくしており、自動車の大手企業が研究開発費を増やせた要因のひとつといえるでしょう。自動車産業は開発競争が世界的に加熱しており、その内容は環境や安全への配慮、自動運転技術など多岐に渡ります。
記事には
『独フォルクスワーゲンは16年に前年比0.4%増の136億ユーロ(1兆7000億円)を投じた。今後5年間で電動化技術に90億ユーロ(1兆1200億円)を投じる計画を掲げる。米ゼネラル・モーターズ(GM)は同8%増の81億ドル(約9000億円)を充てた。』
とあり、日本の最大手であるトヨタ自動車の研究開発費も、過去最高になるといわれています。17年の研究開発費は、前年比1%増の1兆500億円です。
企業の活動方針を決める要素のひとつに税制があり、税制はGDPなどの経済統計指標を参考にして定められています。したがってGDPは国の政策や企業の経営、さらには私たちの財産や暮らしにまで影響を与えているといえるでしょう。
現在の日本はもちろん、未来の日本をも豊かにしていくために、GDPは大切な指標です。時代に沿った新しい経済指標について議論を重ね、適切なものに変更していくことが求められています。政府を批判する材料にするだけでなく、GDPが示す本当の意味を考えるようにしたいですね。