―今日は、家づくりを考える方が悩みやすい「賃貸と持ち家、どっちが得か」というテーマでお話を伺いたいと思います。
山本先生:よく聞かれるテーマですよね。賃貸派・持ち家派、どちらにも言い分があって、ネット上でも未だに議論が続いているんじゃないでしょうか。
ちなみに、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が2026年7月~8月に全国の20~65歳の男女5,000人を対象に実施した最新のアンケート結果によると、「持ち家派」が63.3%、「賃貸派」が18.7%と、持ち家派が6割を超える結果になっています。持ち家派の理由で一番多かったのは「家賃を払い続けることが無駄に思えるから」(47.1%)、賃貸派では「住宅ローンに縛られたくないから」(35.8%)でした。
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でも、この結果だけを見て「だからどっちが正解!」なんて決めつけるのは、あまりにも無謀ですよね。
―持ち家派が6割を超えているんですね。賃貸は身軽、持ち家は資産になる…たしかに、それぞれの良さはよく聞きますが、それでも答えが出にくいのはなぜでしょうか。
山本先生:それぞれの良さを"言葉"で比べているからなんですよ。賃貸には、転勤や家族構成の変化に合わせて住み替えやすいという良さがあるし、持ち家には、自分の資産になるという良さがある。どちらも本当なんですよね。だから、比べるときは同じ物差し、つまり「ふたつを同じ土俵に乗せて、具体的な数字で比べてみる」のがいいと思いますよ。
―なるほど。具体的にはどう計算するのでしょうか。
山本先生:まずは、賃貸に住み続けた場合の家賃の総額を出してみましょう。例えば、現在の年齢が32歳だとして85歳まで住み続けるとします。家賃上昇や更新料も考慮して、検討しましょう。具体的に、【32歳~37歳:家賃月8.5万円/38歳~47歳:家賃月10万円/48歳以降:12万円】【85歳まで賃貸に住み続ける】とします。この場合、生涯で支払う家賃の総額は【総住居費:約7,284万円※】になります。
9.png 224.16 KB※独自に試算しています。
―一生分となると、想像以上に大きな金額になりますね。
山本先生:そうなんです。家賃は毎月わずかな支払いなので気になりにくいですけど、積み重なるとこれだけの金額になるんですよ。この金額が、「①今の手取り年収の何年分にあたるのか?」、また「②その家賃総額をローンに逆算してみるといくらの住宅ローンを組んでいるのと同じことになるのか?」ということを知っておくだけでも、より冷静に持ち家との比較がしやすいかも知れませんね。
―そういう計算って簡単にできるんですか?
山本先生:はい、簡単にできます。①の場合は、さきほどの家賃総額7,284万円を現在の手取り年収で割るだけ。電卓があればすぐできます。例えば税込年収500万円の人の場合の手取りはおよそ400万円です(妻パート、小さなお子さん2人の4人家族)。そうすると7,284万円÷400万円≒18.21年。「これから先の18年と2.5カ月は大家さんに家賃を払うだけに汗水たらして働き続ける」、という結果になるんです。この結果に驚いて持ち家を買ったって人はたくさんいるんですよ。だってみなさん、毎月の家賃しか見てないから(笑)。
―たしかに、今後18年間は大家さんに家賃を払うためだけに働き続ける、って数字見たら、みなさんびっくりされますよね?
山本先生:アパートの大家さんの息子が毎日スポーツカー乗り回しているのを見てて「この車、俺の家賃で買ったんだ!」とハタと気付き、もう腹が立ってすぐ住宅を購入した人もいるんですよ。冗談のようなホントの話(笑)。次は「②その家賃総額をローンに逆算してみるといくらの住宅ローンを組んでいるのと同じことになるのか?」について具体的に計算してみますね。現在32歳のケースでしたよね? 事例では85歳まで53年間家賃を払い続けることになる訳ですから返済期間は最近利用者が増えている「50年」としてみましょう。ローン金利は金融機関によって異なりますが、2026年10月時点の金利は、変動金利で年1.1~1.9%。固定金利だとフラット50の50年返済の金利が4.1%。ここでは変動金利の中間値の1.5%として計算してみますね。そうすると、さきほどの例でいくと、既に5,122万円の住宅ローンを抱えている人と同じことになるんですよね。
10.png 226.52 KB―えー!既に5,122万円のローンを組んでいる人と同じ⁉それは驚きです!でも確かにこれは真実なんですよね。では、その家賃の総額を、持ち家と比べるにはどうしたらいいのでしょうか。
山本先生:ここまで①②と比較してきて、今度は「③家賃総額と実際の住宅購入の総住居費との比較」です。比較するのは85歳まで住む総住居費ですが、ここで大事なのは、今住んでいる賃貸と同じエリア・駐車スペースも踏まえて同じくらいの広さで比べることです。条件がそろっていないと、どちらにでも有利な結果が出せてしまいますからね。そのうえで、物件価格をそのまま比較するのではなく、住宅ローンの金利の総額や住宅の維持費等も踏まえてシミュレーションする必要があります。
例えば、条件を揃えた場合の物件価格が4,000万円だとします。【物件価格:4,000万円/頭金:300万円/ローン返済期間:35年/ローン金利:1.500%、年間の固定資産税・維持費:20万円】とすると、【総住居費:6,138万円※】となります。
つまり、住居費の総額は、持ち家の方が家賃より1,146万円安くなります。特に最近の住宅は、一昔前の「家は30~40年で建て替え」という消耗品ではなく、高性能で耐用年数も長くなっているので、この比較はとても参考になると思いますよ。
11.png 217.14 KB※独自に試算しています。
―そして、持ち家であればそれが資産になるんですね。広さという意味では同じ条件の比較にはなりませんが、もし仮に、一家の大黒柱に万が一のこと(※死亡・高度障害等を指します)があった場合、賃貸ならより家賃の安い部屋に住み替えることができて、家賃の総額も抑えられるのではないでしょうか?
山本先生:その可能性もゼロではないでしょうね。ただ、実際の現場では、60歳を過ぎたシニア層が新しく賃貸を借りるのはなかなか難しいんです。貸主さんは家賃の滞納や住人の孤独死などを心配されますから、年金生活に入ってからの住み替えは、思っているほど上手くいくとは限らないんですよ。
それに対して持ち家の場合、多くの金融機関では、住宅ローンを借りる際に「団体信用生命保険」(通称:団信)への加入が条件となっています。団信は、住宅ローンの返済途中でご本人が死亡、高度障害になった場合に、ご本人に代わって生命保険会社が住宅ローン残高を支払う生命保険制度です。つまり、残されたご家族がローン債務を引き継ぐことはありませんので、持ち家の総住居費はさらに減ります。私自身、実際にそれを経験された方のお話をこれまで何度も伺ってきましたので、実体験からしても、本当に安心できる仕組みだと思いますね。そして、今加入している生命保険の無駄を減らせるのもポイントです。
12.png 212.42 KB賃貸にしろ持ち家にしろ、万一のことも踏まえて具体的な数値でシミュレーションをしてみるといいですね。
―総額に加えて、もしもの時の備えも含めて比べると、より現実的な比較ができそうですね!
山本先生:そういうことです。賃貸と持ち家のどちらが合っているかは、今の家賃やどういう住宅を購入したいか、働き方、家族構成によって人それぞれなんです。転勤が多い方、いずれご家族と一緒に暮らす予定の方など、状況は千差万別ですからね。だからこそ、「なんとなく」ではなく、具体的な金額でリスクへの備え方も踏まえて考えることが大切なんですよ。
そのためにも、家づくりの際には、見落としがちな維持費や、万が一の保障まで含めて、一緒に資金計画を考えてくれる住宅会社を選ぶといいと思いますね。
―こういったシミュレーションをしてくれる住宅会社ですと、より安心して家づくりを進められそうですね!ありがとうございました。
■ご回答いただいた専門家の先生
ChatGPT Image 2026年8月4日 12_50_32 (2).png 1.08 MB山本 嘉人 先生 |Yamamoto Yoshito◇プロフィール幅広い実務知識に基づいて構築した戦略的情報システムを住宅営業に取り入れ、顧客の抱える諸問題を解決しながら成約に持ち込む複眼的なコンサルティングには定評があり、その活躍は多数の専門誌や 新聞などに記事として取り上げられている。開発したFPソフトは大手住宅メーカーを始め全国の工務店、不動産会社、生命保険会社、金融機関等に採用されている。また、独自のリスクマネジメント手法を 駆使したマイホームセミナーや、中高年層を対象とした相続不動産セミナーは全国で好評を博している。
◇ 講演実績東京電力、日本生命、あいおい損保、住宅金融支援機構、 金融広報委員会(日銀)、JA 他
◇ 制作・著作住宅・不動産・相続に関する著者や論文、コラムなど多数あり
◇ 資格ほか1級ファイナンシャルプランナー、CFP、公認不動産コンサルティングマスター、社会保険労務士、行政書士、2級建築士、宅地建物取引士 他