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中古住宅の流通の活性化が期待されるインスペクション

中古住宅を売ったり買ったりする際の、従来からの常識が変わりつつあります。
以前にも下記の記事で書きましたが、中古住宅を売却する時には「建物現況検査(インスペクション)」を実施することが義務化される方向に向かっています。

中古住宅を購入する時の常識を変えるインスペクション

 ハッピーリッチ・アカデミー第220号 (2015年6月23日付)
『中古住宅の診断、義務化へ』
~住宅診断は日本の住宅ストックの流通を促進するか?~

インスペクションが義務化に向かう流れの中で、既存の住宅におけるインスペクションの活用が盛り込まれた宅地建物取引業法(宅建業法)の改正が2016年2月に閣議決定されました。
既存住宅のすべてを検査する完全な義務化というわけではないのですが、住宅の維持管理に対する社会的な認知度や関心が高まっていくことが期待され、世間一般の住宅取引の常識が変わっていくことになるのではないでしょうか?

宅建業法の改正によって義務化された内容は以下の通りです。

<「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」を閣議決定>

(平成28年2月26日国土交通省発表資料より)
『既存の建物の取引における情報提供の充実 宅地建物取引業者に対し、以下の事項を義務付けることとします。
1. 媒介契約の締結時に建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の依頼者への交付
2. 買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
3. 売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付』

つまり宅建業者は、下記の事項を行う必要が出て来た、という事です。

1.既存住宅の媒介契約時には、既存住宅の売主に対してインスペクションをするかどうかを案内し書面で交付する必要がある。
2.既存住宅の買主に対しては、重要事項説明の時にインスペクションの結果や概要などの詳細を説明する必要がある。
3.売買の契約が成立した時には、売主と買主の双方が建物の状況について確認した事項を記載した書面を出す必要がある。

今後不動産を仲介する宅建業者は、売主と買主の双方の当事者に説明しなくてはならない立場となるのでインスペクションや建物のことについて詳しく知っておくことが求められます。

なぜインスペクションが必要なのか?

インスペクションが義務化に向かっている目的は、既存の中古住宅の流通を活性化することにあります。
日本では、中古住宅の購入を検討している人が住宅の「質」を確認しにくいことが中古住宅の売買件数が増えない要因のひとつとなっています。
「この家の耐震性や耐久性はどうなっているのか」
「今までどこをどのように修繕してきたのか」
「これから先、どこが修繕が必要で、修繕した場合は費用がどれくらいかかるのか」
「そもそも、この家はどれくらいもつものなのか」
など。中古住宅の購入を考えている人は不安が多いものです。
中高住宅の購入を検討する人は、家の購入を考えた時に立地的なことや予算の面などで新築の物件の購入が難しいため中古住宅の購入を検討する人が多いです。そのような中で、中古住宅を購入した後、早い時期に大規模な修繕が必要になってしまうと費用も高額になり困ってしまいます。
今回の宅建業法の改正によってインスペクションが一般的に行われるようになれば、中古住宅を購入する人は家の「質」を知ることができ、今まで以上に安心して中古住宅を買う事ができます。購入した後に大がかりな修繕が行われる場合でも、建築確認の検査済証や設計図書があれば、壊していい壁はどれかなどの詳細がわかります。検査済証があるとローンを組む場合にも銀行の審査が通りやすくなることも考えられます。
インスペクションが導入されることによって、将来的には建築物に関する詳細な情報がある物件とない物件では、取引される価格にも差がでてくるかもしれません。

インスペクションは住宅会社の常識も変えていく?

住宅会社は「建てるだけ」ではもはややっていけない時代

今回の宅建業法の改正は、不動産を仲介する業者の現場だけでなく、新築を提供している住宅会社や工務店などの販売側の現場の風景や意識を変える可能性もあります。
住宅会社や工務店では、自社で家を建ててくれたお客様に将来のインスペクションについて説明し、設計図書や建築確認検査済証、構造計算書など建物に関する情報を、将来の必要性と併せて確実に渡さなければいけません。さらに、それらの情報やデータをお客様に代わって保存してあげることも必要になるでしょう。
家を建てたお客様が、何年か経過した後に何らかの事情で売却することになった場合に、その不動産を仲介する会社から設計図書や建築確認検査済証、構造計算書や修繕した履歴などを求められることが、これからはあり得ることです。その際に「設計図書などのデータや情報が何もない」という状態では、会社の評判にも響いてきます。場合によってはお客様からのクレームの対象にもなりかねません。

これからは「アフターメンテナンス」の充実度もお客様からの評価対象

最近では、新築した時の施工内容や設計図書などのデータを、お客様に代わって長期間保存しておくサービスを実施している住宅会社も増加しています。インスペクションに関していうと、建てた時の設計図書などの情報だけでなく、その後に行われたリフォームやメンテナンスなどの修繕に関する情報があることが大切になります。そのためには、新築時の施工内容だけでなく、メンテナンスなどの修繕の履歴を蓄積してデータ化した住宅の履歴書ともいえる「家歴」が重要です。「家歴」を用いることによって、効率よくメンテナンスやリフォームを行うことができ、インスペクションにも役立ちます。

住宅会社や工務店では、家を建てるだけではなく、いわゆる「アフターメンテナンス」と言われる継続的なメンテナンスなどのサービスを実施する体制が今まで以上に必要となってきます。

「アフターメンテナンス」ができる会社は、「当社には修繕・営繕の仕組みがあります。設計図書や修繕履歴は保存します。24時間対応もします。」など、「アフターメンテナンス」をしていない会社との差別化を図るため、継続的なメンテナンスサービスをより強く前面にだしてくるようになるでしょう。
インスペクションが義務化の方向に向かう事によって、家のメンテナンス情報などの修繕履歴が家の資産価値を決めるという時代が来ることが予想されます。住宅会社においても「家を建てることからアフターメンテナンス」までの総合的なプログラムがこれからは必要不可欠の時代となるでしょう。「アフターメンテナンス」が出来ないという会社は「売って終わりの会社」と消費者からは認識されてしまい、必然的にお客様から選ばれなくなってしまうかもしれません。

家族の命と財産を守る「家」

今回の宅建業法の改正が施行されるにあたり、宅建業者や住宅会社ではインスペクションについてよく勉強をしておく必要があります。業者には負担がかかることですが、これはお客様にも業界にとっても良いことです。

中古住宅は、これまではどんなに性能の良い家を建てても、また建てた後に全くメンテナンスをしていなくても、築年数や間取り、広さや立地条件などで価格が決まる傾向がありました。それが今回の宅建業法の改正で、建物の性能やメンテナンスの状態などといった家の「質」が価格に反映されることになるかもしれません。

インスペクションの義務化へ向かう流れは、結果的には日本に質の良い家が増えることに繋がります。

家は大切な家族の命を財産を守るものです。

誰もが、安全な家に安心して暮らしていくのは当然のことです。

そのためにも、日本の住宅の質が高まり、住宅の取引環境が良くなることがこれからは大事になってきます。

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※当コンテンツに記載されている内容については、現在は終了している制度や古いニュースも含まれております。あくまでご参考いただくものでございますので、実際に住宅購入・ライフプランを検討される場合は、現在の情報をご自身で確認の上ご判断ください。