―先日は、固定金利は国債の利回りに連動するというお話を伺いました。国債の利回りって、そもそも大きく動くタイミングってあるのでしょうか。
山本先生:いい質問ですね。実は国債の「発行量」そのものが、時代ごとの大きな出来事と密接に関わっているんですよ。ここ20年くらいの歴史をザックリと振り返ってみましょうか。
―よろしくお願いします!
山本先生:18年前になりますが、2008年にリーマンショックがありましたよね。世界的な金融危機が起きて、景気を支えるために日本は、銀行や企業にお金を貸したり、国民に直接お金を配ったり(定額給付金)、国が自ら大きな買い物(公共事業投資など)をしました。当然、その財源として国債の発行も急増しましたね。
そして2011年の東日本大震災。復興のための特別な国債、いわゆる「復興債」が発行されました。こちらも国債発行が大量に増える大きな局面でした。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 12_57_55.png 1.15 MB―何か大きな危機が起きるたびに、国債の発行も増えてきたのですね。
山本先生:そうなんです。ただ面白いのが、2013年からの「アベノミクス」の時期ね。2回目に総理大臣になった安倍晋三内閣が、日本の長引くデフレ(物価が下がり続ける不景気)から抜け出して経済を復活させるために経済政策を打ち出していたんです。この頃も国債残高は増加していましたが、日銀が大規模な国債買入れを行っていたため、長期金利は低い水準に抑えられていたんですよ。
過去の回でもお話した通り、国債の発行量が増えると金利は上がる傾向にあるんだけど、ここでは、発行量が増えても金利が上がらない、という珍しい時期でした。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 14_08_11.png 1.35 MB―発行量と金利が、必ずしも連動しなかった時期もあったんですね。
山本先生:そういうこと。政策や極端な不景気などでは、教科書通りの動きをしないこともあります。だから予測って難しいの。
そして2020年のコロナ禍。経済対策のために、国債の発行額が過去最大級の水準にまで膨らみました。ここまでが、大きな危機と国債発行の歴史です。ほんとにザックリですが(笑)。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 14_13_16.png 1.45 MB―なるほど…。では、今の状況はどうなんでしょうか?
山本先生:ここが今日の本題です。財務省の直近の発表によると、国債や借入金などを合計した「国の借金」は、2026年6月末の時点で1,346兆円を超えて、過去最大を更新しました。
―1346兆円…数字が大きすぎて、正直ピンとこないです!
山本先生:ですよね(笑)。分かりやすく言うと、今の日本の人口で単純に割り算すると、国民1人あたり約1,095万円の借金を背負っている計算になるんです。つまり、1,000万円くらい借金した人が、日本中に1億人以上いるようなイメージ!もちろんみなさん個人が実際にどこかから借金をしているということではないですよ。あくまで国の借金をひとりに換算すると…というイメージとして捉えてくださいね。
―身近な数字で捉えると一気に現実感が増しますね。なんで過去最大になってしまったのでしょうか。
山本先生:背景は、一言には言えませんよ。そもそも構造的な要因として、少子高齢化が急速に進んだことによる年金や医療、子育て支援等にかかる費用が膨らんでいることやコロナ対策をきっかけに大規模な財政支出や経済対策もあげられます。ほかにも理由があります。また、今の高市内閣では、「成長重視の積極財政」を掲げています。景気を良くするための政策に力を入れる分、その財源である国債発行も増える傾向にありますから、そういった財政運営へ注目してみるのもいいですね。もちろん国債発行増以外にも様々な要因が絡んできますが。
ChatGPT 画像 2026年9月28日 14_26_58.png 1.3 MB―なるほど、私たちの住宅ローンへの影響を考えながら財政ニュースを見ると頭に入ってきそうです!
山本先生:そうでしょう~?おさらいになるんだけど、国が国債をたくさん発行すると、市場に出回る国債の量が増える。買い手に対して売り手が多くなるので、国債の価格は下がりやすくなります。そして前もお話しした通り、価格が下がれば利回りは上がる。この利回りをお手本にして、銀行の固定金利も上がっていく、という流れです。
ChatGPT Image 2026年8月26日 13_33_30.png 1006.97 KB―一本の線でつながっているんですね。今に始まったことじゃないというか。
山本先生:その通りです。リーマンショックの時も、コロナ禍の時も、形は違えど繰り返されてきた流れですから。だから「金利が上がりすぎて、もう家が買えない!」と焦る必要はありません。むしろ、これからは財政のニュースを見るたびに「これは金利にどう影響しそうかな」と、自分なりに考えてみる視点を持ってもらえたらいいと思いますよ。
―変に焦るのではなくて、冷静にどういう状況か知ることが大事なんですね!ありがとうございました!
■ご回答いただいた専門家の先生
ChatGPT Image 2026年8月4日 12_50_32 (1).png 1.08 MB山本 嘉人 先生 |Yamamoto Yoshito◇プロフィール幅広い実務知識に基づいて構築した戦略的情報システムを住宅営業に取り入れ、顧客の抱える諸問題を解決しながら成約に持ち込む複眼的なコンサルティングには定評があり、その活躍は多数の専門誌や 新聞などに記事として取り上げられている。開発したFPソフトは大手住宅メーカーを始め全国の工務店、不動産会社、生命保険会社、金融機関等に採用されている。また、独自のリスクマネジメント手法を 駆使したマイホームセミナーや、中高年層を対象とした相続不動産セミナーは全国で好評を博している。
◇ 講演実績東京電力、日本生命、あいおい損保、住宅金融支援機構、 金融広報委員会(日銀)、JA 他
◇ 制作・著作住宅・不動産・相続に関する著者や論文、コラムなど多数あり
◇ 資格ほか1級ファイナンシャルプランナー、CFP、公認不動産コンサルティングマスター、社会保険労務士、行政書士、2級建築士、宅地建物取引士 他