―住宅の広告で「月々8万円でマイホーム!」といった表現を見かけます。家賃と同じくらいなら買えそう、と感じる方も多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか。
山本先生:いいところに目をつけましたね。今日はその「月々○万円」という表現について、「フレーミング効果」という心理の話を交えてお話ししましょう。
―「フレーミング効果」とは、どういう心理なのでしょうか。
山本先生:同じ内容でも、"見せ方(フレーム)"によって受け取る印象が変わってしまう心理のことです。例えば、手術の説明で「成功率90%です」と言われるのと、「10人に1人は失敗します」と言われるのとでは、中身は同じなのに受ける印象が全然違うでしょう?住宅の「月々8万円」も、まさにこの見せ方の一つなんですよ。
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―たしかに、同じ内容でも印象が変わりますね。「月々8万円」は、どう見たらいいのでしょうか。
山本先生:まずは、総額に置き換えてみることです。月々8万円を35年間払い続けると、8万円×12ヶ月×35年で、返済の総額は3,360万円になります。「月々8万円」と聞くと手が届きそうに感じますが、「総額3,360万円」と聞くと、ずいぶん印象が変わりますよね。月々の差も総額で見ると大きくなります。例えば月々2万円の違いでも、35年間で見れば840万円の差になるんですよ。見せ方による感じ方の違いですね。
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―総額で見ると、受け止め方が大きく変わりますね。ほかに気をつけるべき点はありますか。
山本先生:その「月々8万円」が、どんな条件で計算されているかを確認したいところです。例えば、ボーナス時の返済を別に組み込んでいたり、当初の金利が低い変動金利で計算していたり、頭金をある程度入れる前提になっていたり。広告の数字は、あくまで"ある条件のもとでの一例"なんですよ。自分の条件で計算し直すと、月々の金額が変わることも珍しくありません。
―たしかに、前提条件によって月々の金額は変わってしまうのですね。ほかにも見落としやすい点はありますか。
山本先生:もう一つ見落としがちなのが、住宅ローン以外にかかるお金です。持ち家になると、固定資産税や火災保険料、将来の修繕費なども必要になります。「月々8万円」はローンの返済額だけの話なので、実際に毎月の暮らしにかかる住まいのお金は、それより多くなると考えておいた方がいいですよ。
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―では、広告の数字に惑わされないためには、どう考えればいいのでしょうか。
山本先生:ここで、05の回(参考:
vol.05 住宅購入の自己資金はいくらあれば安心か?〜いい住宅会社の見極め方〜)でお話しした自己資金の計算の順番が役に立ちます。「①物件価格+諸経費で総額を出す → ②毎月無理なく返済できる金額から借入限度額をつかむ → ③引き算で自己資金を出す」という流れでしたね。大事なのは、広告の「月々○万円」から考え始めるのではなく、自分が「無理なく返済できる金額」から考え始めること。そうすれば、見せ方に左右されにくくなりますよ。
最初に見た物件 (9).png 224.33 KB住宅会社に相談するときも、「月々○万円、ボーナス時は○万円、返済期間は○年、頭金は○万円くらいで考えているのですが、諸経費も含めると総額でどれくらいの家が建てられますか?」と聞いてみるといいですよ。月々の金額を、すぐに総額に置き換えて説明してくれるかどうかは重要なポイントです。
―月々の金額だけを見て「安い」と判断するのは危ないのですね。
山本先生:その通り。月々の支払いがいくらかを知ること自体は大切ですよ。ただ、それだけで「安い」と判断しないで、総額はいくらか、どんな前提条件か、維持費はどれくらいかまで、あわせて見るようにしましょうね。そこまで分かりやすく説明してくれる住宅会社なら、安心して相談できると思います。
―こういったフレーミング効果に揺さぶられずシミュレーションすることが大事なんですね!ありがとうございました。
■ご回答いただいた専門家の先生
ChatGPT Image 2026年8月4日 12_50_32 (2).png 1.08 MB山本 嘉人 先生 |Yamamoto Yoshito◇プロフィール幅広い実務知識に基づいて構築した戦略的情報システムを住宅営業に取り入れ、顧客の抱える諸問題を解決しながら成約に持ち込む複眼的なコンサルティングには定評があり、その活躍は多数の専門誌や 新聞などに記事として取り上げられている。開発したFPソフトは大手住宅メーカーを始め全国の工務店、不動産会社、生命保険会社、金融機関等に採用されている。また、独自のリスクマネジメント手法を 駆使したマイホームセミナーや、中高年層を対象とした相続不動産セミナーは全国で好評を博している。
◇ 講演実績東京電力、日本生命、あいおい損保、住宅金融支援機構、 金融広報委員会(日銀)、JA 他
◇ 制作・著作住宅・不動産・相続に関する著者や論文、コラムなど多数あり
◇ 資格ほか1級ファイナンシャルプランナー、CFP、公認不動産コンサルティングマスター、社会保険労務士、行政書士、2級建築士、宅地建物取引士 他