採光とは?基本情報と家づくりにおける重要性を解説
写真2 和歌山県_階段まわり‗観葉植物とタイル床と階段.jpg 118.34 KBまずは、採光について基本的な内容を解説します。
採光の定義と意味
採光とは、太陽の光を室内に取り込むことを指します。建築基準法では、部屋の明るさを確保するための基準が設定されており、適切な位置に必要な面積の窓を設置する必要があります。ただし、設置する窓のサイズや配置は、住宅を建てる土地の条件や隣家との距離によって異なります。マイホームを建てる際は、間取りやデザインを考える上で採光についても考えなくてはいけないと、念頭に置いておきましょう。
建築以外における「採光」とは?|看護業界
採光という言葉は、建築業界だけでなく看護業界でも使われています。看護での採光は、建築用語と同様に「明るさを確保すること」ですが、患者の日常動作を確保するためという観点が重視されています。日本工業標準調査会が発表する照度基準によって定められた病室の明るさは150~300lx(ルクス)。手術室だと、医師や看護師が効率よく作業するために750~1,500lxの照度が必要とされています。
建築以外における「採光」とは?|カーテン
カーテンを購入する際にも採光という言葉を聞くことがあります。採光カーテンとは、外から取り入れた太陽の光を室内に拡散するカーテンのこと。光を和らげて拡散するため、日差しが強い南側の窓でも眩しくなりにくいという効果があります。また、外からの視線を遮りながらも光を取り入れられるというメリットもあるため、採光カーテンは人通りが多い道路沿いの窓にも向いているでしょう。
このように、建築における「採光」と看護業界やカーテンで使われる「採光」では、言葉の意味合いが若干異なります。
採光と遮光の違いと重要性
採光とは、光を室内に取り入れること。反対に、遮光は光を遮ることを指します。先述したように、人が暮らす建物では一定以上の明るさが必要で、建築基準法で定められています。そのため、住宅を建てる際は、窓を配置して計画的に光を取り込むことが重要です。
しかし、近年は地球温暖化が進行しているため、夏は猛暑に見舞われています。夏の厳しい暑さを乗り越えるには、遮光も考慮する必要があります。直射日光が強すぎる窓には遮光カーテンを使用することで、太陽光の強さを調節できるでしょう。また、遮光は外からの光が入らないようにするだけでなく、室内の光が漏れないようにすることも指しています。夜間に室内の光が漏れないように対策することは、プライバシー確保にもつながるため家づくりにおいて重視すべき点だといえるでしょう。
採光が良い部屋・住宅が暮らしへ与える影響
写真3 自宅でくつろぐファミリー-min.jpg 86.23 KB自然光が窓から差し込む明るい住宅には、さまざまなメリットがあります。採光の悪い住宅は薄暗いだけでなく、印象もどんよりとしたものになりかねません。ここからは、採光が良い住宅を建てると得られるメリットや、暮らしへの影響を見ていきましょう。
生活リズムが整いストレス緩和に繋がる
屋外から太陽光を取り込める採光の良い住宅に住むと、生活リズムが整います。人間は太陽光を浴びると、セロトニンを分泌します。セロトニンは不安や怒りを鎮めて精神を安定させる効果があるとされる物質です。このセロトニンが低下すると、攻撃的な性格になる・うつ病になるなどのリスクに。そのため、採光が良い住宅に住むことは、健康面にも良い影響をもたらすでしょう。
カビが発生しにくい衛生的な環境を作れる
住宅を建てる際に気を付けるべきことの一つにカビの発生があります。採光が良い家には窓が適切に配置されているため、太陽光の殺菌効果によりカビの発生を抑えられるというメリットがあります。また、窓は採光だけでなく風通しにも影響します。窓を開けて換気することでも、カビの発生を防げるでしょう。
昼間は照明なしで生活できるので電気代を節約できる
採光の良い住宅に住むと、昼間は照明をつけなくても自然光だけで快適に暮らせます。また、日差しを計画的に室内に取り込むことで、冬でも最低限の暖房で快適に暮らせます。電気代を節約できるうえ、環境に配慮した暮らしが叶うでしょう。
R+houseネットワークの工務店は、パッシブデザインを取り入れた家づくりを得意としています。パッシブデザインは自然の力を使い、快適かつ省エネな暮らしを実現するための手法です。夏は庇(ひさし)で強い日光を遮り、冬は貴重な太陽光を室内に取り込むように、設計を工夫。目には見えない光や熱を活用した、一年中快適に暮らせる住宅を提供しています。パッシブデザインを採用した住宅が気になる方は、ぜひお近くのR+houseネットワークの工務店までお問い合わせください。
>>参考コラム:R+houseの注文住宅で採用されるパッシブデザインって何?メリットや事例を紹介
採光と建築基準法|住宅・居室に必要な基準と計算方法
写真4 平屋の住宅設計・間取り図-min .jpg 93.53 KBここで、建築基準法で定められている採光についての基準を解説します。
建築基準法で定める採光の義務
住宅における採光の基準は、建築基準法第28条に定められています。居室における採光のための窓は「有効採光面積」をクリアしなくてはいけません。採光に有効な開口部は、原則として居室の床面積の1/7以上の大きさが必要です。
なお、2023年6月17日に「改正建築基準法」が公布されました。採光規定についても見直しが行われ、有効採光面積の基準が変更に。床面における照度が50lx(ルクス)以上ある場合に限り、有効採光面積が「床面積の1/7以上」から「床面積の1/10以上」に緩和されています。照度は太陽の光に限らず照明を使用しても構わないことから、窓が少ない住宅を建てやすくなりました。
参考元:国土交通省|改正建築基準法について参考元:国土交通省|令和4年改正 建築基準法について
採光補正係数と具体的な計算方法
光の入りやすさを数値化したものが「採光補正係数」です。採光補正係数は、以下の式で計算できます。
d=隣地境界線から軒先までの距離
h=窓の中心線から軒先までの高さ
A、B=用途地域ごとに定められた数値
上記の計算式でAとBに入る数値は、建物が建てられる用途地域によって異なります。
用途地域とは土地の用途を細分化したもので、これについては後ほど詳しく説明します。
まずは用途地域ごとの計算式をご紹介します。
| 用途地域 |
計算式 |
| 住居系の地域 |
(d÷h)×6-1.4 |
| 工業系の地域 |
(d÷h)×8-1 |
| 商業系の地域・無指定地域 |
(d÷h)×10-1 |
注文住宅を建てる場合には、主に第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域といった住居系の地域を選びます。ただし、場合によっては工業系や商業系の地域に建てる場合もあります。
注文住宅における採光補正係数は「(d÷h)×6-1.4」の計算式で求められます。
有効採光面積の算出方法
続いて、採光補正係数をもとに、有効採光面積を求めます。計算方法は以下の通りです。
| 有効採光面積の計算式 |
| 窓の面積×採光補正係数≧有効採光面積(床面積の1/7) |
有効採光面積を算出する部屋の条件を以下のように仮定して、必要な窓の面積を算出してみましょう。
| 条 件 |
・住宅系の地域に建てられた住宅 ・採光補正係数は3 ・部屋の広さは6畳(9.7㎡) |
条件の数値を有効採光面積の計算式に代入すると「窓の面積×3≧9.7×1/7」に。つまり「窓の面積≧(9.7×1/7)÷3」となり、窓の面積は0.46㎡以上必要だと計算できます。同様の計算方法で、広さが異なる部屋の場合も必要な窓の面積を求められます。
注文住宅で採光を設計に取り入れるポイント
point英文字スタンプと水色の色鉛筆jpg.jpg 87.64 KB
続いて、注文住宅の設計において採光のポイントとなる項目をお伝えします。
採光計画のポイント1|方角ごとに窓の種類を変える
東西南北の方角によって、適している窓や部屋の種類が異なります。
東側の窓
朝日が昇る東側は、午前中に太陽の光を取り込めます。そのため、朝日を浴びて起床したい方は、東側に寝室を配置するのがおすすめです。ただし、午前中から部屋の気温が上昇しやすく、午後はほとんど日が入らないというデメリットがあります。
西側の窓
太陽が沈む西側の窓には、午後から夕方にかけて日差しが差し込みます。室内は比較的明るいものの、西日によって夏は室温が上がりやすいデメリットがあるでしょう。また、日差しが強く、床や畳が日焼けしてしまうリスクもあります。西側には小窓を付ける、もしくは窓を配置しないことでリスクを回避できるでしょう。
南側の窓
南側の窓は、一日中光を取り込みやすいという特徴があります。リビングなど家族が集まる空間は、南側に窓を配置する間取りにすると自然の光で明るく過ごせるでしょう。ただし、紫外線も窓から室内に入り込んでしまうため、UVカット加工を施した素材を使うなど工夫が必要です。
北側の窓
採光計画のポイント2|高窓や天窓を付ける選択肢もある
窓は、設置する方角だけでなく高さにも影響を受けます。天井につける天窓は、周囲の視線を気にすることなく、太陽光を室内に取り込めるのが魅力です。ただし、天窓を南側に設置すると日差しが入りすぎてしまい、夏は室温が上昇する要因になることも。また、太陽光パネルは、天窓を避けて設置しなくてはならず、採光以外の面にも考慮する必要があるでしょう。
高窓は、壁の高い場所に設置する窓のこと。天窓同様、視線を気にせずに明かりを取り込めるでしょう。また、高い位置にあるので、カーテンをつけなくても済むというメリットがあります。
採光計画のポイント3|吹き抜けは西側を避ける
採光を良くするために取り入れられるのが吹き抜けです。吹き抜けとは1階と2階の間に天井がない、明るく開放的な空間です。しかし、吹き抜けは室温が高温になりやすいという特徴があるため、西側は避けるのが良いでしょう。
採光計画のポイント4|周辺環境が変化する可能性を考えておく
土地を購入した段階で家の周りに建物がなくても、住んでいるうちに住宅が建つ可能性があります。有効採光面積を計算したうえで十分な大きさの窓を配置しても、周囲に高い建物が増えると光が入らない場合があります。周辺環境が変化しても光を室内に取り込めるよう、設計時点で考える必要があるでしょう。
採光計画のポイント5|気象条件に合う採光計画を立てる
採光は、住宅を建てる土地の気候や日照条件に影響を受けます。曇りや雨が多い地域では、積極的に太陽の光を取り入れられるように工夫しなければいけません。一方、晴れが多い地域では日差しを遮り、室内の気温が上昇しないようにする必要があります。
採光を考える上での4つの注意点
写真6 びっくりマークの積み木(注意点・ポイントのイメージ).jpg 73.72 KB採光が良い住宅にはさまざまなメリットがありますが、窓を増やすことでデメリットを感じることがあります。ここからは、採光を考える上での注意点を見ていきましょう。
プライバシーの確保が難しい
人通りが多い道路に面した土地に住宅を建てる場合、窓のサイズが大きい、数が大きいと外からの視線が気になることがあります。特に1階はプライバシーの確保が難しく、目隠しのためにシャッターやカーテンを閉め切って生活する必要が出てきてしまう可能性があります。
プライバシーを確保しつつ太陽の光を室内に取り入れるには、高窓を採用するのがおすすめです。また、低い位置に設置する窓はすりガラスを採用すると、光を取り入れつつ視線をブロックできます。加えて、植栽や塀などの外構を工夫することで、プライバシーを確保できます。
防犯対策に力を入れる必要がある
採光が良い住宅は窓が多いともいえるため、防犯対策に気を遣う必要があります。警察庁によると、2024年に一戸建て住宅が侵入窃盗の被害を受けた12,475件のうち、52.9%である6,596件は窓から侵入されています。
窓が多くなればなるほど、防犯対策をする箇所が増えることを覚えておきましょう。具体的な防犯対策としては、以下の方法が挙げられます。
・窓に防犯フィルムを貼る
・ 防犯ガラスを採用する
・ シャッターや雨戸を設置する
・ 補助錠を取り付ける
・ センサーライトや防犯ブザーを設置する
ただし、窓の数だけ防犯グッズを購入することになるため、コストがかさみます。住宅の採光を考える際は、室内の明るさだけでなく安全面や防犯費用も考慮する必要があるでしょう。
参考元:警察庁|住まいる防犯110番>>参考コラム:注文住宅を建てたい!治安の良し悪しを判断する方法とポイント
断熱性が損なわれる可能性がある
窓は、壁に比べると断熱性が低い傾向にあります。そのため、窓を増やすと住宅の断熱性能が下がり、外気の影響を受けやすい住宅になりかねません。採光のためにやみくもに窓を増やすと、快適に暮らせない住宅になる可能性があるので注意が必要です。
窓を増やすと収納が減ってしまう
窓が多い部屋は、収納を確保するのが難しい可能性があります。物が多い部屋に大きな窓を設置すると、壁の面積が減り収納力が落ちてしまいます。
採光に関するよくある疑問
Q&Aと書かれたブロック.jpg 42.62 KB
ここで、採光に関してよくある疑問にお答えします。
納戸にも窓は必要?
普段使わない衣服や物を収納するための部屋を、納戸といいます。納戸は、廊下やトイレなどと同様に居室ではないので、採光に関する規定はありません。
窓を付けられない防音室の場合はどうする?
地下室の採光を確保する方法は?
地下室で採光を確保するには、ドライエリアというスペースを作る方法があります。地下室の前の地面を掘り、地下室にも開口部を設ける方法です。ドライエリアを設置することで地下室にも窓を付けられて採光や換気が可能になりますが、雨水対策をして地下室の浸水を防ぐ工夫も必要になります。
採光を意識した施工事例3選
R+houseネットワークの工務店が手掛けた注文住宅のなかから、採光を意識した住宅の施工事例をご紹介します。
開放的な掃き出し窓を配置したコンパクトな注文住宅
自然を身近に感じられる注文住宅
非日常感がある中庭が特徴の注文住宅
知っておきたい建築用語|用途地域とは?
写真11 街の風景-min.jpg 89.81 KB最後に、マイホーム計画でよく聞く「用途地域」について詳しく解説します。
用途地域とは
用途地域と採光|日影規制
日影(ひかげ)規制とは、周囲の土地に一定時間以上影がかからないようにする規定のこと。日照時間を確保し、快適な暮らしを確保するために定められています。規制の内容は敷地の用途地域によって異なります。第一種低層住居専用地域の場合であれば、軒の高さが7mを超える建物もしくは地上3階建て以上の建物が対象です。
参考元:世田谷区|4-10 日影規制のあらまし
用途地域と採光|北側斜線制限
採光に大きく影響する建物の北側の高さを制限するものが、北側斜線制限です。建物の北側に勾配を設けることで、隣の敷地の日照を確保します。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域に設けられている制限です。
用途地域によって、建てられる建物の高さが変わります。そのため、マイホームを建てる際には、希望のエリアがどの用途地域なのか、建てられる高さの制限を確認しておきましょう。
参考元:国土交通省|建築基準法(集団規定)
採光に工夫を凝らした注文住宅を建てるならR+houseネットワークの工務店へ
写真12 和歌山県_格子状の壁面収納と馴染む窓.jpg 362.4 KB採光は、太陽の光を室内に取り込むことを指します。注文住宅建てる際は、採光に関するさまざまな法律や制限に準拠した住宅を建てなければいけません。採光が良い住宅は、ストレスを貯めにくく衛生的な生活ができるうえ、電気代も抑えられるでしょう。
R+houseネットワークの工務店では、注文住宅を建築家とともに手掛けています。また、高断熱高気密住宅を標準としており、一年中快適に暮らせる性能の高さも魅力です。理想のマイホームを建てたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。
>>建築家のアイデアで採光が良い家が叶う!注文住宅「R+house」についてはこちら