山本先生:今日は「アンカリング効果」という心理を取り上げましょうか。家探しの"入口"で起こりやすい錯覚なんですよ。
―「アンカリング効果」、初めて聞きました!どのような心理なのでしょうか。
山本先生:最初に見た数字が、その後の判断の基準になってしまう心理のことです。アンカーは船の錨(いかり)のことで、最初の数字が頭の中に錨のように下りて、そこから離れられなくなるイメージですね。例えば、最初に5,000万円の物件を見てから4,000万円の物件を見ると、4,000万円がずいぶん安く感じませんか?
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―たしかに、先に5,000万円を見ていると、4,000万円は手頃に感じてしまいそうです。
山本先生:そうでしょう?でも、最初に3,000万円の物件を見ていたら、同じ4,000万円でも「高いな」と感じるはずです。物件の価格は変わっていないのに、最初に見た数字によって感じ方が変わってしまう。これがアンカリング効果なんですよ。
―その手法は、賃貸の部屋探しで経験がある気がします。(笑)新築の家づくりでは、どんな場面で起こりやすいのでしょうか。
山本先生:典型的なのが、住宅展示場やモデルハウスの見学です。モデルハウスは、オプションをたくさん取り入れた豪華な仕様になっていることが多いでしょう?最初にその豪華な家を見てから「標準仕様ならこのくらいの価格です」と言われると、その金額がとてもお得に感じてしまうんです。
最初に見た物件 (4).png 186.23 KB―自分がお得に感じるなら、それはそれで大きな問題はないようにも思えますが…。
山本先生:そこが落とし穴なんです。「なんとなく安く感じる」という理由で、本当は自分の返済能力を超えている物件を"お得"だと判断してしまうことがあるんですよ。高いか安いかの基準が、自分の家計ではなく、たまたま最初に見た金額になってしまう。これが一番のリスクですね。
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―それだと、その時はよくても後々後悔しそうですね。では、この錯覚に引っかからないためには、どうしたらいいのでしょうか。
山本先生:一番の対策は、物件を見る前に、まず自分の「無理なく返済できる金額」を先に決めておくことです。05回(参考:
vol.05 住宅購入の自己資金はいくらあれば安心か?〜いい住宅会社の見極め方〜 )でお話しした「①総額 → ②毎月無理なく返済できる金額から借入限度額をつかむ → ③自己資金」という計算を、見学の前に済ませておく。そうすれば、どんな物件を見ても、判断の基準は「最初に見た金額と比べて高いか安いか」ではなく「自分の予算内かどうか」になりますよ。
―錨(いかり)を、最初に見た物件価格ではなく、自分で計算した予算に下ろしておくということですね。
山本先生:まさにそういうことです。自分の予算という錨を先に下ろしておけば、豪華なモデルハウスを見ても、心が揺さぶられにくくなりますよ。見学の前に、住宅会社に資金計画の相談をしておくのもいいと思います。
山本先生:そうなんです。こうした心理は誰にでも起こるもので、知っているだけでも冷静になれますよ。家づくりは一生に何度もない大きな買い物ですから、「最初に見た金額」ではなく「自分の返済可能額」を基準に、落ち着いて判断していきましょうね。
―「お得に感じるか」と「本当にお得なのか」は、別物ですね。今回も、ありがとうございました!
■ご回答いただいた専門家の先生
ChatGPT Image 2026年8月4日 12_50_32 (2).png 1.08 MB山本 嘉人 先生 |Yamamoto Yoshito◇プロフィール幅広い実務知識に基づいて構築した戦略的情報システムを住宅営業に取り入れ、顧客の抱える諸問題を解決しながら成約に持ち込む複眼的なコンサルティングには定評があり、その活躍は多数の専門誌や 新聞などに記事として取り上げられている。開発したFPソフトは大手住宅メーカーを始め全国の工務店、不動産会社、生命保険会社、金融機関等に採用されている。また、独自のリスクマネジメント手法を 駆使したマイホームセミナーや、中高年層を対象とした相続不動産セミナーは全国で好評を博している。
◇ 講演実績東京電力、日本生命、あいおい損保、住宅金融支援機構、 金融広報委員会(日銀)、JA 他
◇ 制作・著作住宅・不動産・相続に関する著者や論文、コラムなど多数あり
◇ 資格ほか1級ファイナンシャルプランナー、CFP、公認不動産コンサルティングマスター、社会保険労務士、行政書士、2級建築士、宅地建物取引士 他